2023年7月7日(金)
初のアジア系女性市長 カナダ・トロント
草の根の力で格差解消へ
【ワシントン=島田峰隆】カナダの最大都市トロントの市長選挙でこのほど初当選したオリビア・チャウ氏が5日、来週予定される就任を前に記者会見し、「多くの仕事に取り組むのが待ち遠しい」と意欲を語りました。同市では初のアジア系女性市長の誕生となります。
市長選(6月26日実施)でチャウ氏を押し上げたのは、貧富の格差解消に取り組む団体や労働組合など市民の草の根の運動でした。チャウ氏は、ホームレス支援や公共交通の充実を公約に掲げ、草の根の運動に依拠して勝利しました。
今回の市長選挙は、ジョン・トーリー前市長が女性職員との不適切な関係を理由に今年2月に辞職したことを受けて行われました。元市議会議員のチャウ氏は約27万票(得票率約37%)を獲得。2位の副市長(得票率約32%)に約3万4000票差で勝利しました。
チャウ氏は当選後の演説で「より思いやりがあり、より経済的に住みやすい安全な都市をつくるために努力を惜しまない」と強調しました。
同氏が最も重視した公約は1万人を超えるとされるホームレスや、住宅確保に困る市民への支援です。住宅を人間の尊厳の問題と位置づけ、▽市の責任で手頃な賃貸住宅を建設▽女性向けスペースの設置▽基金を創設し、現場の支援団体と協力―などを訴えました。
ごく一部の富裕層による高級住宅の購入に応分の税負担を求め、ホームレス支援の財源にするとしました。
また公共交通の充実や公共図書館を地域住民の交流の場として強化することなどを掲げました。
現地メディアによると、前市長はホームレスによるキャンプ設営を「違法で危険」だとして立ち退きを迫ったほか、公共政策の予算を削るなどしてきました。
トロント・スター紙は「中道・右派市政から進歩的な左派市政への転換」と指摘しています。同紙に寄稿した移民支援団体の幹部は、移民である女性市長の誕生について「絶望と不信から希望と楽観の都市への変化」だと歓迎しました。
選挙戦ではチャウ氏を押し上げようと数千人が戸別訪問などに参加したといいます。
市民団体の幹部の一人は地元紙に「戸別訪問用の紙やペンが毎日不足した」と語っています。チャウ氏は「市民が相互に強く結束したことが力になった」と感謝を表明しました。








