2023年7月3日(月)
検証 政治攻防のプロセス 2021―2023
共産党 逆流押し返すたたかい
支配勢力の攻撃といかにたたかい、どういう成長と発展の努力をはかってきたか―。日本共産党の志位和夫委員長は6月24日の第8回中央委員会総会で、今回の統一地方選の結果を、「日本共産党の封じ込めをはかる大逆流との生きた攻防のプロセスのなかでとらえる」―「政治対決の弁証法」の立場で到達点をつかむことが重要だと強調しました。支配勢力と日本共産党との数年来の攻防のプロセスを振り返ります。(中野侃、若林明)
政権交代めざし挑戦 支配勢力側に危機感
![]() (写真)訴える志位和夫委員長(左から3人目)=2021年10月2日、東京・新宿駅西口 |
日本共産党は2021年の総選挙で政権交代に正面から挑戦する政治的大攻勢をかけました。野党が初めて本格的な共闘態勢―共通政策、政権協力、選挙協力で合意をつくり、選挙戦にのぞむ歴史的な選挙となりました。
志位和夫委員長は同年10月2日の演説で、「今度の総選挙で、日本共産党は党の歴史で初めて、政権交代、新しい政権の実現に挑戦します」と表明。全国メディアも選挙公示日のトップで「自公VS野党共闘」と報じ、自公政権継続か野党共闘による政権交代かが客観的争点になっていきました。
こうした展開は支配勢力―自公とその補完勢力にとって心底恐ろしいものとなりました。このままでは単に小選挙区で敗北するだけではない、“日本共産党が協力する政権”が生まれれば、自公政治を根本から変える巨大な一歩となる―支配体制が土台から揺らぐことへの強烈な危機感にかられたのです。
共闘の分断狙う
![]() (写真)自民党の急告(2021年10月21日) |
そのために支配勢力は一部のメディアも動員し、必死の野党共闘攻撃、日本共産党攻撃を展開。衆院解散の当日から、自民党の甘利明幹事長(当時)が「(総選挙は)自由民主主義の思想のもとに運営される政権と、共産主義が初めて入ってくる政権とどちらを選ぶか、という政権選択だ」などと選挙戦の性格を根本からねじ曲げる「体制選択論」攻撃を行いました。
支配勢力が選挙戦の基本戦略に置いたのは、野党共闘の推進力として奮闘している日本共産党に攻撃を集中することで、共闘を分断し、破壊することでした。
日本共産党が日米安保廃棄、自衛隊違憲などの主張をしていることを取り上げ、「安保・外交政策が違う政党が組むのは野合」といった攻撃が激化。自公の補完勢力の日本維新の会などを中心に、街頭やテレビ討論で同様の攻撃が繰り返されました。
安倍晋三元首相は街頭演説で、日本共産党が政権に参加すれば「日米同盟の信頼関係は危うくなる」とし、安保法制=戦争法を「廃止」すれば、「日米同盟は終わりです」とまで主張。野党共闘が「同盟崩壊」という自公政治の土台への脅威となる危機感をあらわにしました。
59選挙区で勝利
こうした苛烈な攻撃のなかでも、共闘勢力で一本化した59の小選挙区で勝利。石原伸晃元幹事長をはじめ、自民党の重鎮や有力政治家を落選させ、33選挙区で自民党候補を僅差まで追い上げるなど、市民と野党の共闘は重要な成果を勝ち取りました。
選挙戦のなかで自民党は「情勢緊迫―一票一票の獲得に全力を!!」と訴える緊急指令(急告)を発出し引き締めを図るなど必死の反撃。選挙後には、「立憲と共産党の統一候補というのは大変な脅威でした」(自民党議員)、「(選挙が)終わったとき、勝ったか負けたかわからなかった」「単独過半数割れと言われていた。(開票日)夜8時の時点で、党本部の雰囲気は暗かった」(自民党関係者)との声が漏れました。
支配勢力を恐怖に陥れるまで攻め込み、追いつめましたが、日本共産党自身は悔しい後退を喫しました。共産党は選挙後の4中総で、「支配勢力の必死の攻撃に対して、それを上回る必死さで反撃する点で弱点があった」と総括し、次のたたかいにのぞみました。
「力対力」論理に抗し対案の平和外交語る
22年の参院選に向け、野党共闘と日本共産党への攻撃はさらに強まりました。
根拠の無い批判
![]() (写真)「野党共闘は失敗」と論じる大手新聞。右から読売新聞2021年11月3日、産経新聞11月13日、同12月1日 |
総選挙直後から支配勢力や一部メディアは「野党共闘は失敗」「共産党の綱領は現実離れ」「共産党との共闘が失敗の原因」などの大キャンペーンを開始。立憲民主党に対し、「与党から政権を奪取する」ためには「まずは共産党と決別できるかどうかを明確にしなければならない」(21年12月1日付「産経」)などと絶縁を迫る共闘攻撃も行われました。
日本共産党が4中総で「野党共闘は失敗」というキャンペーンに対し、「事実に全く反するデマ攻撃」だと反論すると、「毎日」は、山田孝男特別編集委員のコラム「風知草」(同年12月6日付)で、「宣伝口調の断定」などと根拠の無い異様な批判を展開。さらに、日米安保条約、自衛隊、天皇の制度などについての日本共産党綱領の立場を、「現実離れも、私から見れば度を超している」と断定し、綱領改定を迫りました。
こうした一連のキャンペーンに対し、日本共産党は、党綱領の中心点を国民の疑問や関心にかみあって明らかにする「あなたの『?』におこたえします――日本共産党綱領の話」(「はてなリーフ」)を作成。「はてなリーフ」を活用し、綱領の立場を果敢に語り、党の真実の姿を明らかにする取り組みに奮闘しました。
“危機意識”利用
22年2月、この大逆流に、ロシア・プーチン政権が開始したウクライナ侵略を契機とした大逆流が加わりました。
ウクライナ侵略直後から日本国内では、ロシアの蛮行に乗じた「日米同盟の抑止力強化」「敵基地攻撃」「軍事費2倍化」「9条変えろ」の大合唱に。安倍晋三元首相のテレビ番組での発言を契機に、それに呼応した日本維新の会が「核共有」の議論を推進するなど、国民の“不安からくる安全保障への危機意識”を利用した「力対力」の論理が広がっていきました。
日本共産党に対しては、「ロシアのプーチンと共産党は同じ」「9条だけで日本を守れるのか」といった攻撃が行われ、一時期には党の訴えに対する冷たい反応が一挙に広がりました。
こうした大逆流に抗して日本共産党は平和の論陣を張りたたかいました。
「国連は無力だ」との議論に対しては、国連総会でロシアの侵略を国連憲章違反と糾弾し、ロシア軍の即時・無条件撤退を求める決議が140を超える圧倒的多数の国の賛成で採択されたことを示し、「侵略を止める一番の力は国際世論だ」と主張。バイデン米大統領などが唱える「民主主義対専制主義」などという世界を二分する特定の「価値観」に基づく軍事ブロック的な対応を批判し、「『国連憲章守れ』の一点で団結を」と訴えました。
大軍拡と改憲の道が平和も暮らしも押しつぶす危険な道であること、その抜本的対案として、憲法9条を生かした外交で東アジアの全ての国を包み込む包摂的な平和の枠組みをつくる「外交ビジョン」を語り抜きました。
同時に、共闘の一致点とならない安保・自衛隊政策は共闘に持ち込まないこと、急迫不正の侵害がある時には自衛隊を活用することも明らかにしました。政権参加にあたり、政府としては自衛隊合憲の解釈を変える立場はとらず、自衛隊活用をめぐる憲法上の矛盾もないことを示しました。
こうした論戦を力に、大逆流に正面から立ち向かい、それを少しずつ押し返してきました。6中総では、参院選の結果を「『二重の大逆流』によって、総選挙の到達点よりもさらに大きく押し込まれた地点から、全党の大奮闘によって押し返す過程での一断面」と総括しました。
メディア通じた中傷 民主的運営示し反論
![]() (写真)記念講演する志位和夫委員長=2022年9月17日、党本部 |
参院選後から統一地方選にむけて、共産党への攻撃は出版物やメディアを通じた大キャンペーンとなって続けられました。2022年が日本共産党創立100周年であり、そのことに絡めた政治学者の著作やテレビに頻繁にでているジャーナリストの著作が相次ぎ出版され、さまざまな共産党への誹謗(ひぼう)・中傷が行われたのです。
大手紙が一斉に
毎日新聞「政治プレミア」(6月1日付)では、共産党は「共産主義からの路線転換は避けられない」との主張や「組織的にはソ連共産党に由来する民主集中制を改め、党員による党首の直接選挙を行うこと」「日米安保条約や自衛隊を肯定するとともに、大企業・財界に対する敵視を改める」ことを求める政治学者の意見を紹介しました。
大手紙は社説やコラムなどで共産党への攻撃を行いました。「朝日」が「共産党結党100年」と題する社説(7月16日付)で、一方的に「異論や少数意見が表に出にくい」と断定し、民主集中制を「閉鎖性を伴う」と言い、志位和夫委員長の在任期間を問題視し、党首公選制の実施を求めました。
こうした共産党への中傷や攻撃に対して、志位委員長は党創立100周年記念講演会(9月17日)で総決算的な反撃を行いました。
志位氏は講演で、日米安保条約容認の党への変質を求める攻撃に対して、戦後沖縄の不屈のたたかいを紹介し米国の支配の打破を戦略的な課題として据えたことが、共産党のたたかいの大きな支えになったことを明らかにしました。
志位氏は民主集中制への攻撃に対して、「党の民主主義のうえでも、統一のうえでもカナメをなす党大会をどうやって開いているかを見てほしい」と強調。直近の第28回党大会で、党大会議案は大会の2カ月半前に発表し、全国のすべての支部、地区委員会などで議論するなど、民主的運営の実態を示しました。一方で、自民党の党大会の「次第」には、報告・提案に対する質疑も討論もないと指摘し、民主集中制の組織原理を持つ共産党が「党内の民主的討論にもっとも力をつくす党」だと強調しました。
躍進へ足がかり
今年1月以降は、規約違反で党を除名された元党員を利用した反共キャンペーンも繰り返されました。「朝日」社説(2月8日付)は、元党員を“善意の改革者”と持ち上げ、日本共産党に対し「異論を許さぬ強権体質」などと悪罵を投げつけました。
日本共産党は、元党員の除名の問題では、除名の理由が異論を持っていたことではなく、元党員の一連の発言が綱領と規約からの逸脱であり、規約に基づく正式のルートでの表明を一切せずに、外から攻撃をしたことによるものだと明らかにしました。また、日本共産党の指導部選出をめぐって、個人の専断を排し、集団指導に徹する、派閥をつくらず統一した行動で国民に対する責任を果たす、ポスト争いには無縁であるなど、党の民主的特質を全面的に明らかにし、事実に基づかない不当な批判を政党の自律性への侵害となると厳しく反論しました。
地方選では悔しい後退を喫しましたが、22年参院選の比例得票率と比較して、道府議選・政令市議選・区市町村議選ともに得票率を伸ばしました。今後の前進・躍進にむけた足がかりです。
支配層が恐れる共闘の力
法政大学名誉教授 五十嵐仁さん
![]() (写真)五十嵐仁さん |
2021年の総選挙当時、菅政権を引き継いだ岸田政権は新型コロナ感染対策や経済政策の失敗などで強い批判を浴びており、岸田政権は追い込まれた状況の中で総選挙をたたかうことになりました。このような中で、市民と野党の共闘が選挙区で進み統一候補も擁立されました。これに危機感を強めた政権側はメディアを総動員しながら、立憲・共産両党を攻撃したのです。特に、共闘の機関車役を演じていたのが共産党でしたから、共産党を狙い撃ちにし、その攻撃は選挙後も続きました。
その後、ロシアによるウクライナ侵略を利用した軍拡推進の世論誘導が行われます。ウクライナでの惨事に便乗する形で、改憲・大軍拡・大増税の攻勢が強まり、共産党への民主集中制や党内民主主義に関する激しい攻撃も始まりました。それに対して、共産党は機敏に反撃してきました。
岸田政権は安全保障環境が悪化していると言って、安全保障環境をさらに悪化させかねない「力対力」の軍事費増強で対応しようとしています。これに対して共産党は憲法9条を生かした話し合いによる平和外交戦略を提起し、逆流を押し返すために奮闘してきました。
岸田政権と国民との矛盾は深刻です。今までの地域・地方でつちかってきた共闘の関係を生かし、実績も踏まえて草の根からの共闘を立て直すことが必要です。市民と野党の共闘こそが唯一の活路であり、それが力を発揮すれば政治は変えられます。支配層はそれを最も恐れているのだと思います。
政治対決をめぐる動き
2021年
10月 野党共闘への攻撃が強まる
総選挙投開票(10月31日)
11月 第2次岸田内閣発足
12月 総選挙後、共産党を狙い撃ちにした攻撃始まる
岸田首相が所信表明で「敵基地攻撃能力」検討を明言(12月6日)
党綱領の中心点をわかりやすくまとめた「はてなリーフ」を作成
22年
2月 ロシアがウクライナ侵略(2月24日)
安倍元首相のテレビ番組出演をきっかけに「抑止力」論広がる
憲法9条批判と合わせた攻撃
岸田首相、NATO首脳会議で大軍拡宣言(6月29日)
7月 参院選投開票(7月10日)
日本共産党結党100周年(7月15日)
100周年を前後にメディアからの反共キャンペーンが大展開
朝日新聞が社説で「民主集中制の『閉鎖性を問う』」(7月6日付)
8月 第2次岸田改造内閣発足
9月 党創立100周年記念講演会(9月17日)
志位委員長が講演で党への中傷や攻撃に、総決算的反撃
12月 敵基地攻撃能力保有を明記した「安保3文書」閣議決定(12月16日)
23年
1月 元党職員が党攻撃の書籍を出版
2月 (社説)「共産党員の除名 国民遠ざける異論封じ」(「朝日」8日付)
「赤旗」紙面で大手メディアなどの反共キャンペーンに反論を展開
3月 23年度予算成立(3月28日)自公賛成、共立維国れ反対
4月 統一地方選前半戦投票(4月9日)
衆参5補選、統一地方選後半戦投票(4月23日)













