2023年7月1日(土)
大学 人種考慮の入学選考
米最高裁が「違憲」判断
人権団体「公民権の重大な後退」
【ワシントン=島田峰隆】米連邦最高裁は29日、ハーバード大学とノースカロライナ大学が採用する人種を考慮した入学選考について、国民の平等な権利を保障する憲法修正第14条に違反しているとの判断を示しました。人権団体などは「公民権の重大な後退だ」と批判しています。
米国では人種差別撤廃を求めた公民権運動が盛り上がった1960年代から、黒人などの少数派を優遇する積極的差別是正措置(アファーマティブ・アクション)が大学の入学選考や企業の採用などに適用されてきました。奴隷制の時代から続く人種差別を是正し、社会に多様性を確保することが目的です。その後、白人への逆差別だとして裁判で争われましたが、人種を考慮することは78年に多様性確保の手段として「合憲」とされていました。
9人の最高裁判事のうち、ロバーツ長官ら保守派6人が同措置を憲法違反と判断しました。多数派意見は「多くの大学は長い間、個人のアイデンティティーに関して、やり遂げた挑戦や身につけた技術、学んだ教訓ではなく、肌の色を基準にするという誤った結論を下してきた。この国の憲法の歴史は、そうした選択を認めない」と主張しました。
一方、リベラル派は「国民の間には、健康、資産、幸福の面で巨大な人種間格差が存在する。遠い過去につくられたものだが、世代を超えて今日まで議論の余地なく引き継がれている」(ジャクソン判事)と指摘しました。
訴訟は、人種を考慮した入学選考は白人やアジア系を差別しているとして保守派の団体が起こしたもの。大学側は、差別との指摘を否定し、措置がなくなれば黒人などの学生が減ると反論していました。
バイデン大統領は29日、最高裁の判断に「強い不同意」を表明しました。「米国に差別はまだ存在する。この判断を最終決定にしてはならない」と指摘しました。
人権団体「全米市民自由連合」(ACLU)は「国民が民主主義に全面的かつ平等に参加することを阻む動きだ」と強調。公民権運動組織「全米有色人地位向上協会」(NAACP)は「人種差別の傷痕が残る社会で最高裁は意図的に現実を無視した」と批判しました。








