2023年7月1日(土)
主張
子育て家庭の困窮
政府は事態を直視し対策急げ
物価高騰の中で困窮する子育て家庭が悲鳴を上げています。子どもの学習支援や食料支援を行っている認定NPO法人「キッズドア」の緊急アンケート(6月26日発表)には、子どもが満足に食事をとれていないとの訴えが相次ぎました。給食がなくなる夏休みへの不安の声は回答(1538世帯)の91%に達しました。電気代高騰で、暑くてもエアコンをつけないようにしている家庭は6割超でした。キッズドアは「親子の命が危険です」と国や自治体に現金給付をはじめ緊急対策を求めています。岸田文雄政権は深刻な事態を直視し、急いで対応をとるべきです。
放置できぬ「命の危険」
緊急アンケートは5月30日~6月6日、キッズドアが支援している家庭を対象に行われました。回答者の9割が母子世帯で、8割以上が年収300万円未満でした。「貯金はない」は35%でした。
物価高で家計が厳しくなったとの答えは99%です。なかでも食費への影響が深刻です。1人当たりの食費が月1万円以下(1食当たり110円以下)の家庭が4割に上っています。「肉や魚はほとんど買わず、週2、3回食事をぬく」「おなかがすいても水を飲んでごまかした」などの他、子どもの食事を優先し親が食事を我慢したケースも少なくありません。
夏休み期間、「子どもに栄養バランスのよい食事を与えられない」と心配する声は切実です。これまでも給食のない長期休みで子どもがやせてしまうことが問題になっていました。栄養失調、エアコンを使わないことによる熱中症など健康被害の広がりが今夏の現実の危険として指摘されています。
キッズドアの渡辺由美子理事長はアンケート結果発表の記者会見で、3年以上続いたコロナ禍で蓄えも底を尽き、借金をしている人も多いと強調しました。終わりの見えない物価高騰で絶望し始めている現状も挙げて、「困窮子育て家庭に死が身近に迫っている」と警告しています。
この声を政治は真剣に受け止めなければなりません。自治体が困窮家庭の実態を早急に把握し、現金給付や食料支援、無料で涼しく過ごせる居場所や学習スペースの確保など対策を講じることが急務です。生活保護制度と生活困窮者支援事業の周知や利用促進を図ることも欠かせません。
国は、物価高騰に対応し、子育て家庭への特別給付金を計画的に給付することなどを検討する時です。生活保護基準の引き上げや夏季加算の導入をはじめ、困窮家庭が安心して夏を乗り切ることができるよう、経済的支援の強化を図ることが必要です。
対策法10年実効性持たせ
岸田政権は今、子ども子育て政策として「異次元の少子化対策」を打ち出しています。しかし、子どもの貧困対策の拡充の具体策はみえません。高すぎる大学授業料の引き下げはなく、給食費無償化の国の制度も先送りしました。
日本の子どもの貧困率は13・5%、7人に1人が貧困状態とされます。この現実の打開を重要課題に据えることなしに、安心の子育て社会は実現できません。
親から子への「貧困の連鎖」を断ち切ることを掲げた子どもの貧困対策法成立から今年で10年です。実効性ある施策を推進することが政治の責任です。








