2023年6月30日(金)
主張
香港国安法3年
人権弾圧を許すなの声さらに
市民の政府批判を禁止した香港国家安全維持法(国安法)が施行されて30日で3年たちました。香港警察は昨年の治安報告で年末までに国安法違反容疑で236人を逮捕し、140人以上を起訴したと発表しています。香港の自由と民主主義は徹底的に抑えつけられています。
一国二制度は中国の公約
香港の「高度な自治」は、英国の植民地だった香港が中国に返還されたとき、中国政府が世界に公約したことです。「一国二制度」を守れとの声を国際社会が上げ続けていくことが重要です。
国安法は「国家分裂」「政権転覆」「外国勢力との結託」を最高無期懲役の重罪として禁止しました。何の行為が罪に当たるかは法律で明示されず、民主化運動や市民の政府批判全体が取り締まりの対象となっています。
昨年7月に警察官僚出身の李家超氏が香港政府トップの行政長官に就任し、締め付けが一段と強められています。
最近では、日本留学中に香港独立を支持するメッセージをSNSに投稿した香港の学生が帰郷の際、国安法違反容疑で逮捕されました。同法違反で起訴された民主派の立法会(香港の議会)元議員と活動家の裁判も行われています。
国安法下で選挙制度の改悪が進んでいます。香港政府は、地方議会に当たる区議会の直接選挙枠を議席全体の9割から2割以下に減らす方針です。年内に予定される選挙で実施する見込みです。
前回2019年の区議選では、民主化を求める大規模なデモを受け、民主派が議席の8割超を獲得して圧勝しました。その後、政府に忠誠を宣誓することが議員に義務付けられ、民主派議員が辞職したり、議員資格を剥奪されたりしました。
21年12月に行われた立法会選挙で民主派は、政府への忠誠を基準にした資格審査制度に立候補を阻まれ、議席全体が中国・香港政府に従う議員で占められました。区議会も同様の結果になる恐れが濃厚です。
民主派政党は活動が困難となっています。5月27日には有力政党の一つだった公民党が解散を決めました。立法会・区議会議員が議員資格を剥奪され、幹部が国安法違反容疑などで逮捕されたため、存続できなくなりました。
香港の人権状況に対する批判は国連でも高まっています。トゥルク人権高等弁務官は3月に人権理事会で行った演説で国安法に言及し「人権活動家や弁護士の恣意(しい)的拘束を含む、市民への厳しい規制に対する懸念」を表明しました。
自ら賛成の取り決め守れ
市民の自由な表現や選挙の権利を奪うことは、中国政府がこれまでに賛成、署名した人権に関する国際取り決めに反しています。
世界人権宣言、国際人権規約の自由権規約は「表現の自由」「集会および結社の自由」「直接に、または自由に選んだ代表者を通じて、自国の政治に参与する権利」を定めています。ウィーン宣言は「すべての人権および基本的自由の促進および保護は、政治的、経済的、文化的体制のいかんを問わず、国の義務である」と明記しています。
中国政府は一国二制度に立ち戻るとともに、人権に関する国際取り決めを守るべきです。








