2023年6月21日(水)
主張
米国務長官の訪中
外交努力で対決の悪循環断て
ブリンケン米国務長官が中国を訪問し、習近平国家主席、外交トップの王毅・中国共産党政治局員らと会談しました。米国務長官の訪中は5年ぶり、バイデン政権では初めてです。深刻な対立点の解決に向けた具体的成果があったわけではありませんが、政府間の高いレベルで直接対話が実現したことは重要です。米中関係は1979年の国交正常化以来、最悪といわれ、世界的な緊張激化の要因となっています。外交努力を重ね、軍事的対決の悪循環を断つことが双方に求められています。
軍事対決の行動やめよ
2月に予定されたブリンケン氏の訪中は、中国の気球が米国に飛来し、米軍機が撃墜したことで実現しませんでした。最近では、台湾海峡や南シナ海上空で両国軍の艦艇、航空機が接近し、双方が非難を応酬しています。偶発的な軍事衝突が起きかねない危険な事態です。こうした中で両国が意思疎通に乗り出しました。
一連の会談で双方は台湾問題や経済関係などについて、それぞれの立場を述べ合いました。王政治局員は両国関係の悪化について「根源は、米国が誤った認識を持ち、誤った対中政策を招いたことにある」と米側を批判しました。中国を「戦略的競争相手」とし、包囲を狙うバイデン政権の姿勢にも変化はありません。
一方、高いレベルの交流を続けることと、秦剛国務委員兼外相の米国招待が合意として発表されました。これを機に両国政府が対話を重ね、対立点を含め徹底した意思疎通を尽くすことが求められます。外交努力を妨げる軍事的行動は双方ともやめるべきです。
南シナ海、東シナ海で力による現状変更を迫る中国の行動は国際秩序を危うくする覇権主義の行動です。台湾については、中国が軍事的に威嚇することも、米国などが軍事的関与を強化することも戦争を引き起こす危険を強めます。
米国は、同盟国と有志国を募り、東アジアを中国の台頭を抑え込む主舞台とするため「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)の枠組みづくりを進めています。これも対話に逆行しています。
岸田文雄政権が米国に従って中国包囲網の形成を進めていることは地域の緊張をいっそう高める動きです。
安保3文書の国家安全保障戦略は、米国と同じ表現で、中国を「最大の戦略的挑戦」と規定しました。岸田政権は5年間で43兆円の大軍拡に乗り出し、5月の主要7カ国首脳会議(G7広島サミット)では議長国としてFOIPを前面に押し出しました。
日本こそ対中関係改善を
中国の隣国である日本こそ対中関係の改善に向けて努力しなければなりません。
日本共産党は日中関係を前向きに打開するための提言を3月に発表し、岸田首相、呉江浩駐日中国大使に申し入れました。
日中間には(1)「互いに脅威とならない」との合意(2008年の首脳会談の共同声明)(2)尖閣諸島など東シナ海の緊張を「対話と協議」で解決するとの合意(14年)(3)東南アジア諸国連合(ASEAN)インド太平洋構想(AOIP)に対する賛意―があります。
この三つの共通の土台を踏まえ、道理に立った対中外交に乗り出すべきです。








