2023年6月21日(水)
きょうの潮流
映画にもなった米国防総省の最高機密文書「ペンタゴン・ペーパーズ」はベトナム戦争の真実を暴いたことで知られます。しかし公表されなかった「もう一つのペンタゴン・ペーパーズ」がありました▼それは核戦争の計画や核兵器の指揮統制、そして核危機にかんする調査や研究でした。隠していた文書は失われましたが、それを持ち出したダニエル・エルズバーグ氏はのちに著書『世界滅亡マシン』で、みずからもかかわった米国の核戦略を明らかにしています▼いわく、必要とされる能力はつねに“第一撃”のためのもので、抑止が目的だったことは一度もない。核戦力の発動権限を手に持つのは大統領だけでなく、最高位の軍事当局者に限られてさえいない―▼歴代政権が踏襲してきた核のシステム。その運用がいかにリスクに満ち、世界を破滅に追いやるか。先日92歳で亡くなったエルズバーグ氏は、それを解体するのは一般市民の力だと▼自身も反核運動の先頭に立ちました。以前、核兵器廃絶を訴えて断食したとき、本紙記者にこう話していました。「断食をすると、私たちの命がどれほど他の命、他の種に依存しているか、空気や水や植物に依存しているかがわかります。それらが核兵器に脅かされているのです」▼今も核の恐怖にさらされる人類。エルズバーグ氏はキング牧師の言葉で著書を結んでいました。「さあ始めようではないか。新たな世界をめざす、長く苦しくとも、美しいたたかいに、再び身をささげようではないか」








