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2023年6月20日(火)

主張

熱中症への備え

危機感を持って対策の強化を

 熱中症で病院に運ばれる人が増加しています。梅雨の合間の強い日差しに見舞われ、35度以上の猛暑日を観測した地域が少なくありません。気温の急上昇は、体に大きな負担です。体温調整機能が低下している高齢の人、持病のある人、乳幼児などには特別の配慮と注意が必要です。気候変動の影響で「災害級」の危険な暑さが繰り返される中、国民の命が失われないようにするため、国や自治体が危機感を持って対策を強化することが重要となっています。

エアコンの使用が命綱

 消防庁によると、5月に熱中症で搬送された人は全国で3647人(速報値)でした。昨年同時期を1000人近く上回り、統計を取り始めた2015年以降で2番目の多さでした。

 気象庁は、今夏も猛暑日が増える可能性があるとしています。防災や救急医療の学会などでつくる団体・防災学術連携体は12日、夏秋の気象災害への備えを呼びかけるメッセージを発表し、熱中症について「体が暑さに慣れるまでに数週間程度かかるため、本格的な夏になる前の梅雨の期間から暑さに備え、熱中症予防に取り組む必要があります」と強調しました。

 熱中症で救急搬送される人は毎年数万人を超えています。死亡する人も近年は年間1000人を超える年が多くなっています。政府のまとめでは昨年夏、東京23区での熱中症による死者206人のうち、屋内で亡くなった人は194人でした。その約9割が「エアコンを使用していない」「エアコンを所有していなかった」でした。エアコン使用が命綱になっていることを浮き彫りにしています。

 物価高騰で昨年夏も電気代を気にしてエアコン使用を控えた人が多くいました。政府は5月、電気料金の大幅値上げを了承しました。このままでは昨年以上にエアコン使用を我慢する人が増加する危険があります。命にかかわる大問題です。政府と電力会社は国民に重い負担を強いる姿勢を直ちに改めて、値上げの撤回、国民負担の大幅軽減を検討すべきです。

 「全大阪生活と健康を守る会連合会」の昨年の実態調査には、電気代が怖くてエアコンを1回も使わなかった、食費を削ったなどの深刻な声が寄せられました。日本共産党の山下芳生議員は参院環境委員会で同調査を紹介し、低所得者への電気代援助、生活保護世帯の夏季加算の実施などを求めました(今年4月27日)。経済的理由でエアコンが買えない人への自治体による支援も必要です。エアコンの購入・設置費用の助成対象を拡大することが急がれます。

気候危機打開を真剣に

 学校体育館へのエアコン設置の加速は、災害時の避難所として使われる点からも重要です。1人暮らしや寝たきりの人、認知症の人を見守る取り組みも不可欠です。今国会では熱中症対策を強める法改正が行われ、自治体が公民館や図書館などを「指定暑熱避難施設(クーリングシェルター)」にして、開放する施策が盛り込まれました。実効性が求められます。

 極端な高温の発生リスクを高めている気候危機の打開に真剣に取り組むことが必要です。岸田文雄政権は世界の水準から大きく遅れている温室効果ガス削減目標を引き上げ、その達成に責任を果たす立場に立たなければなりません。


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