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2023年6月17日(土)

解散回避 行き詰まる政権

政治部長 中祖寅一

 今国会での「解散見送り」を15日に明言した岸田文雄首相。13日の記者会見では会期内の解散の可能性について「諸般の情勢を総合して判断する。情勢をよく見極めたい」と発言したばかりでした。5月の「広島サミット」後、内閣支持率の急伸などを受け「早期解散論」が吹き荒れてきました。13日の首相発言を受け、永田町では「解散風」が一層強まり緊張が走っていました。


 あっけない解散政局の幕切れに「一体何だったのか」とメディア関係者は口々に語ります。その背景には岸田政権の深い政治的行き詰まりがあります。

 サミット後、岸田首相の長男・翔太郎氏の首相公邸での忘年会問題や、首相肝煎りのマイナンバーカードをめぐる誤登録トラブルの続出に批判が集中。さらに自公と維新、国民民主の「悪政4党連合」による、健康保険証廃止のマイナンバー法、改悪入管法、軍需産業支援法、軍拡財源法などあいつぐ悪法の強行やLGBT法の改悪修正などに対し、国民の怒りと不信は急拡大してきました。内閣支持率の上昇局面は束の間、下降傾向が強まっていました。

 これを見た自民党閣僚経験者の一人は「岸田政権というより自民党政治に対する不信がある」と指摘。30年以上にわたり経済成長が止まり、賃金が上がらず、人口減少が止まらない中で有効な対策は見えない―。「こうした中で一時的な支持率の上昇は簡単に消える」とつぶやきます。

 衆院小選挙区の「10増10減」による新設選挙区での候補擁立をめぐる公明党と自民党の対立が、東京での選挙協力の解消にいたるなど、党略と打算が揺らぐ事態に発展していました。公明党は「自公の信頼関係は地に落ちた」とまで明言しました。背景には、公明党の比例得票が長期にわたり減少し、比例議席の上積みが期待できず、小選挙区での議席増を狙う動きを強めていることがあります。

 自民党内では、「公明党との選挙協力がなければ東京での当選者は数人にとどまる」との危機感が強まり、「公明との調整には一定の時間が必要で、今は動けない」(関係者)との空気も広がっていました。公明党の力を借りなければ選挙で勝てないという自民党の劣化があります。

 他方、岸田首相にとっては選挙を秋以降に先送りすれば、ますます苦しくなるという行き詰まりも抱えていました。秋になれば、先送りしている軍拡増税の論議に踏み込むことが避けられません。日本共産党が追及してきたように、大軍拡のもとで袋小路に陥っている少子化対策の財源論の具体像も示さなければならず、大規模な社会保障削減、負担増も姿を現してきます。岸田大軍拡が平和と憲法破壊に加え、国民の暮らしを押しつぶす害悪が明らかになってきます。この面では「早期解散」への圧力は高まっていました。

 サミット後の「早期解散」を選択肢の一つとしつつ、じりじりと厳しくなる政治情勢のもと、岸田首相は挟み撃ちにあうように追い詰められてきました。

 二重三重の政治的行き詰まりの根底には、国民の怒りと新たな市民運動の広がり、これと連帯して正面対決する日本共産党のたたかいがあります。今後の政局の動きも予断を許しません。怒りの背景には切実さを増す平和、暮らしなどの国民の願いがあり、一方で国のあり方も問われています。それだけに、悪政連合に正面対決し日本政治を「もとから変える」、日本共産党の躍進が今ほど求められているときはありません。


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