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2023年6月17日(土)

主張

基本法の見直し

農政の根本を転換する道示せ

 岸田文雄政権が食料・農業・農村基本法の見直し作業を進めています。農林水産相の諮問機関である農政審議会の検証部会は5月29日、「中間とりまとめ」を公表しました。世界的な食料危機のもとで日本の農政のあり方が根本から問われているにもかかわらず、従来の枠内での見直しにとどまっており、農業を本格的に立て直す道を提示できていません。

食料自給率の向上に力を

 コロナ感染拡大やロシアのウクライナ侵略の中で、食料の6割以上を海外に依存する日本の危うさが改めて浮き彫りになりました。国内の農業と農村は担い手の減少が加速し、事態は深刻です。

 食料は安い外国産に委ねればいいと国内農業を切り捨ててきた歴代自民党政府の農政の結果です。「中間とりまとめ」は、人口減や環境を含め多くの課題を列記しましたが、原因の根本に踏み込まず、打開の姿勢もみられません。

 最大の問題は、農産物の輸入自由化を前提にしていることです。もともと基本法は、農産物輸入の原則自由化を受け入れた世界貿易機関(WTO)農業協定(1995年)に合わせて制定されました。その後、環太平洋連携協定(TPP)や日欧経済連携協定(EPA)などが推進されました。国内農業が衰退するのは当然です。「中間とりまとめ」は「輸入依存度の高い品目の国産への切り替え」も課題に挙げましたが、競合する外国産の輸入を野放しにしたままでは絵に描いた餅です。

 基本法は、自給率向上の目標を定めると規定し、政府は5年ごとに目標を掲げてきました。しかし目標は達成されず、むしろ低下し続けました。「中間とりまとめ」はその原因をまともに検証せず、未達成への反省もありません。それどころか自給率の目標をあれこれの指標の一つに格下げし、農政の中心課題から外そうとしています。「国民一人一人の食料安全保障」を新たな課題にしていますが、その前提として自給率向上にこそ力を入れるべきです。

 政治の責任で農業や農村を維持する姿勢も希薄です。現在の農家経営の危機は、基本法のもとで価格保障の政策が放棄され、米価暴落などが放置されてきた結果です。「中間とりまとめ」は価格保障政策を一貫して否定し、「市場における適正な価格形成の実現」を提起しています。

 農業の担い手について農政審の検証部会では、大規模化一辺倒では農村はもたない、中小農家も位置付けるべきとの意見が多く出されました。しかし、「中間とりまとめ」は大規模化・法人化の一層の推進を掲げました。多面的機能、環境負荷の軽減など持続可能な農業を課題としていますが、それを担う農業者の激減に歯止めをかけることなしに実現は困難です。

政治のゆがみをただそう

 食料・農業・農村の危機は、国民の生存基盤を脅かし、社会の持続可能性を土台から揺るがしています。農政の根本的転換が急務です。食料自給率向上を国政の柱に据え、価格保障・所得補償の充実、大小さまざまな規模の担い手の維持、人と環境にやさしい農政を実現する時です。農政の行き詰まりの大本にあるのは、米国いいなり、大企業のもうけ最優先の自民党政治のゆがみです。政治を切り替えることがますます重要です。


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