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2023年6月10日(土)

きょうの潮流

 きょう6月10日は「薄桜(はくおう)忌」。作家・宇野千代(1897~1996)の忌日です。由来は、作家が岐阜県本巣市にある樹齢1500年の「淡墨(うすずみ)桜」を愛し、小説のテーマにもして保護活動に取り組んだことから▼98歳で亡くなるまで執筆をはじめ着物デザイナーや実業家としても活動し、「何だか、私、死なないような気がするんですよ」は有名な台詞(せりふ)。人生100年時代と言われる今、再注目され箴言(しんげん)集の出版が相次いでいます▼いわく「いくつになっても人生は今日がはじまり」「難しいことは、愉(たの)しいこと」「逃げずに、ただ中へ進め」「自分はどうしたいと思っているか」「95歳には95歳の美しさがある」「私は前にしか興味はない」▼記者が作家を知ったのは学生時代、自伝的小説「生きて行く私」が原作のテレビドラマでした。十朱幸代扮(ふん)する千代が、郷里の山口県岩国市の小学校で代用教員となるも恋愛沙汰で職を追われ、「泥棒と人殺しのほかは何でもした」と振り返る人生が始まります▼愛読書はドストエフスキー。文学への志を埋(うず)み火のように燃やしながら、尾崎士郎、東郷青児、北原武夫らと出会い、引かれる気持ちに正直に突き進んで関係性の中で成長し、去ろうとする相手からは潔く離れて前へ。その自由闊達(かったつ)さに励まされました▼奔放に見えて、仕事の積み重ねの大切さを身に染みて知っている作家でした。こんな言葉も残しています。「小説は誰にでも書ける。それは毎日、ちょっとの時間でも、机の前に坐(すわ)ることである」


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