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2023年6月10日(土)

主張

同性婚の法制化

続く違憲判断 国が動く番だ

 同性婚を認めない民法などの規定は憲法に違反するとして、福岡市と熊本市に住む同性カップル3組が国を訴えた「結婚の自由をすべての人に」九州訴訟で、福岡地裁は、現行規定を「違憲状態」とする判断を示しました。同様の訴訟は2019年に全国5地裁で起こされ、今回の福岡で一審判決が出そろいました。「違憲」は札幌(21年3月)と名古屋(今年5月)で、「違憲状態」は東京(22年11月)と福岡です。違憲判断が司法の流れとなっています。

個人の尊厳を明確に指摘

 福岡地裁は、婚姻と家族について定めた憲法24条の根底にあった理念の一つは「個人の尊厳」であるとし、「異性愛者であっても同性愛者であっても変わりなく尊重されるべきものである」とはっきり述べました。そして、原告らが婚姻制度を利用できず、法的に家族として承認されないことで「重大な不利益を被って」おり、「個人の尊厳に照らして人格的利益を侵害するものとして到底看過できない」と厳しく指摘しました。

 その上で、婚姻制度の実態や婚姻に対する社会通念が時代とともに移り変わってきたこと、同性婚についても国民の理解が相当程度浸透してきたことに触れ、現行規定は「憲法24条2項に違反する状態にある」と結論づけました。

 一方で、同性婚を認めていないことが、国会の裁量権の範囲を逸脱したものとして憲法に反するとまでは認められないとの留保をつけ、国家賠償請求は退けました。

 判決が明確に「違憲」と断じなかったことに原告らから「もう一歩踏み込んでほしかった」との声も出ました。しかし、5地裁中4地裁が「違憲」「違憲状態」としたことは画期的です。九州訴訟弁護団は声明で、今回の判決について「違憲と判断した点で高く評価できる」と述べ、「一連の判決の流れは、司法が国会に対し立法での対応を強く要請している」と強調しました。福岡地裁判決も、国会に違憲状態を「解消する措置に着手」すべきだと述べました。

 性的マイノリティー当事者は、自分のことを周囲に打ち明けられず、孤独と苦しみを抱えています。九州訴訟の原告準備書面には「テレビで同性愛者は『気持ち悪い』と描かれていた。学校でカミングアウトしたら絶対いじめられると思い、誰にも相談できなかった」「将来どのように生きていけばよいだろうと絶望的な気持ちになった」との声が記されました。

 原告らが訴訟に立ち上がったのは、「同性婚が認められていないのは自分たちの存在を否定されているに等しい」「若い世代が将来に希望を持てない国であってはいけない」という思いからです。いつまでこの声を無視するのかとの問いが、いま国に厳しく突きつけられています。

憲法を高く掲げ動かそう

 最近の世論調査では同性婚を認めるべきだと答える人が6~7割に上ります。岸田文雄首相は「同性婚を認めると社会が変わってしまう」と述べましたが、世論も司法もすでに前向きに変化しています。変わることができていないのは、差別と偏見に満ちた一部の政治勢力におもねって、同性婚の法制化を決断できない政府です。個人の尊厳が守られる社会へ憲法を高く掲げ、政治を変える運動を広げましょう。


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