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2023年6月8日(木)

5人がかり 制圧の映像

送還 力ずく

入管法改悪なら増加懸念 帰国拒めば刑事罰

 命の危険を訴えて帰国を拒むアフリカ出身で難民申請が却下された男性を、出入国在留管理庁の職員が力ずくで送還しようとした映像が公開されました。男性の代理人である大橋毅弁護士が公表したもの。男性は送還されずに済みましたが、入管法改悪案が成立すれば、新たに創設される「送還忌避罪」で刑事罰を科されるケースに該当する可能性があります。(小梶花恵)


写真

(写真)後ろ手に手錠を掛けた男性の腕を持ち上げる職員(大橋毅弁護士提供、一部加工)

弁護士が公表

 映像が撮影されたのは2019年12月23日で、送還の飛行機に乗せる成田空港の待機室内です。長椅子の中央に男性を座らせ、両脇から2人の入管職員が挟み込み、背後から別の職員が肩を押さえつけています。「難民。帰れない」と訴える男性の前に上官が現れ、「抵抗しても連れて帰るんだからあきらめなさい。抵抗すれば制圧を強めるからね。いやなら指示に従いなさい」と指をさして高圧的に命令。「神様。お願い」と請うと、上官は「もう聞かない。はい終わり」と立ち去りました。

泣き叫ぶ男性

 職員らは背中側で手錠をかけた男性の両腕を持ち上げ、「痛い、痛い」と叫ぶ男性を床の上に寝かせて、5人がかりで押さえつけ、膝に体重をかけました。泣き叫ぶ男性に「どこが痛い」と聞き、怒鳴ります。男性は口から泡を吹いてぐったりしました。

 「死ぬから帰れない」と訴え続ける男性に職員らは「あんたの国は住む場所と寝る場所がないだけ」「日本にこんな人要らない。日本以外に行って。言うこと聞かないから」と追い打ちをかけました。数人で抱えて飛行機に乗せましたが、男性が大声を出したため飛行機から降ろされました。

 現行の入管法では難民申請中の人を送還できません。大橋弁護士によると、この日、男性は難民申請が却下された直後に送還が執行されました。法的に難民申請者でなくなった隙に、再び申請する時間を与えず送還するもので、弁護士らが「脱法的」と批判。別の送還を巡る事例で違憲判決が出たやり方です。

3回の申請で

 参院で入管法改悪案が可決されれば、却下と再申請の隙を突く必要もなく、3回以上の申請者は抵抗しても送還することが可能になります。現在男性は2回目の申請中ですが、却下されればもう一度申請しても送還できるようになります。

 また入管法が改悪されれば、男性のように送還を拒む人を「送還忌避罪」で罰せられるようになります。

 大橋弁護士は男性が暴力を振るわれた理由について、「彼は暴れておらず、帰らないと言い続けたことに対してとしか思えない」と指摘。「入管は送還を受け入れさせるために暴行している。現行法では曲がりなりにも送還を免れていたが、改悪後に『帰れない』と主張する人を暴力で送還する可能性が極めて高い」と批判しました。


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