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2023年6月6日(火)

高等教育(大学・短大・専門学校)の無償化へ

――ただちに学費・奨学金返済を半額にし、計画的に無償化をすすめていく

2023年6月5日 日本共産党

 日本共産党の田村智子政策委員長が5日発表した政策「高等教育(大学・短大・専門学校)の無償化へ――ただちに学費・奨学金返済を半額にし、計画的に無償化をすすめていく」は次の通りです。


 重い教育費負担の軽減は、国民の強い願いです。最も力のある子育て支援策にもなります。家計を支援し、低迷している経済の活性化にも大きな力になります。何よりも、憲法は「教育の機会均等」=どんな経済的条件でも平等に教育を受ける権利があることを保障しています。学生の学ぶ権利を保障するために、学費の値下げと奨学金の抜本拡充は急がれます。大学など高等教育の無償化に向かうのは世界の流れであり、日本共産党は高等教育無償化を求めます。

 負担能力を超えた高い学費、10兆円もの借金を若い世代に背負わせている劣悪な奨学金……大学の初年度納入金は、国立大学で81万7800円、私立大学では平均135万7000円にも及んでいます。その一方で、奨学金は貸与制が中心(半分が有利子)のため、学生の3人に1人が平均300万円の借金を背負って社会に出ています。その総額は10兆円近くにもなります。

 学生や保護者の負担能力を超えた高い学費のために、「バイト漬け」、「バイトが必修」の学生生活が当たり前になっています。「仕送り」は1982年以降最少となり(全国大学生協連調査)、授業期間中にも日常的にアルバイトをする学生は、全学生の4分の3になっています。バイトに追われる学生生活の改善は、学生にとっても、大学にとっても、卒業生を受け入れる企業や社会にとっても、まったなしの課題です。

 先進国最低の高等教育への公的財政支出を続けてきた政治の転換こそ……日本の高等教育への公的財政支出(国内総生産〔GDP〕比)は、先進国(経済協力開発機構〔OECD〕加盟国)平均の半分以下、OECD加盟国で“最下位クラス”をずっと続けています。その結果、この50年間に、学費は国立大学で50倍、私立大学で10倍になりました。日本経済の長期低迷で親の世代の賃金が増えなくなると、国は若者に借金をさせる方向を強化します。2000年代に入ると有利子奨学金が急増し、奨学金の貸与総額は15年間で2倍に膨れ上がり10兆円にもなったのです。

 教育への公的財政支出を先進国最低クラスにしてきた政治を転換することは喫緊の課題です。ところが岸田政権は、「異次元の少子化対策」などと言いながら学費値下げには一言も触れません。目玉にしている「授業料後払い制度(仮称)」は、高い学費を借金にして背負わせるというもので、奨学金という借金を若い世代に背負わせてきた悪政を反省する姿勢がありません。未来を担う世代の教育にお金をかけない政治は“国を滅ぼす政治”ではないでしょうか。

 学費無償化にすすむことは、国際社会の目標であり、日本政府の国際公約です……日本も批准している国際人権規約は「高等教育は……無償教育の漸進的な導入により、能力に応じ、すべての者に対して均等に機会が与えられるものとする」としています。学費を値下げして無償にすすむことは世界標準の教育政策であり、日本政府の国民と国際社会への公約でもあります。世界でも異常な高学費は、50年間もの長きにわたって学費値上げを繰り返してきた政治の責任です。日本共産党は、日本社会の発展の基礎であり、国際社会の目標でもある学費無償化に向けてすすむために、ただちに、国の助成で、国公私立すべての学費を半分にするとともに、入学金を廃止する、奨学金を借金から給付へと大転換する、10兆円にものぼる若い世代の借金=奨学金返済を半分に減額する、という緊急の対策を提案します。

1、学費無償化をめざし直ちに半額にし、“入学しないのに取られる”入学金を廃止します

国の助成を増やし、授業料(大学・短大・専門学校)を半額にする

 日本の高い学費は世界でも異常です。ところが岸田政権は、高騰した学費を下げるどころか、物価上昇のもとで私立大学の2割が「授業料値上げの方向」とし、国立大学でも東工大、千葉大、東京芸大が独自の値上げを実施するなど、目前の値上げも放置しています。緊急に、国の助成を増やして授業料を半分に減らし、無償化を計画的にすすめることを提案します。

入学金ゼロに……世界に例がなく、合理的な理由もない高額な負担金はなくします

 入学金は他の先進国にはない日本独特の制度で、私立大学で平均約25万円、国立大学は約28万円と高額です。高額の入学金を払わせ、入学しなくても返金しないというのは、合理性がありません。

2、給付奨学金中心の奨学金制度に改革します――「自宅4万円、自宅外8万円(月額)」を75万人に

 「自宅4万円、自宅外8万円(月額)」を75万人に支給する本格的な給付奨学金制度を創設し、対象・支給額を拡充していきます。

 政府が2020年度から導入した修学支援制度(授業料免除と給付奨学金)は、条件が厳しく、実情にも合わないために全学生の1割しか対象にならず、予算の4割、2000億円も余らせている欠陥制度で、ほんらいの給付奨学金とは程遠いものです。

 奨学金は、国民の教育を受ける権利を保障するもので給付を基本にすべきです。学費が高いのに、給付奨学金制度が確立していないのは世界でも日本だけです。

3、貸与奨学金の返済を半分に減らします

 10兆円もの借金返済は、若い世代の生活に重くのしかかっています。奨学金返済中の人への調査で、「返済が生活設計」に「影響している」は、「出産・子育て」で3割、「結婚」で4割弱、「日常的な食事」が4割強、「医療機関の受診」が3割強など、奨学金返済が結婚や子育てをはじめ生活設計の重荷となり、「子どもの教育費が心配」が8割を超えるなど将来不安も増大させています(労働者福祉中央協議会の調査)。

 アメリカでは、バイデン政権が連邦政府の学生ローンの借り手に1人あたり1万ドル(約137万円)の返済を免除することを決めました(年収約1700万円以下を対象)。日本も、国の貧困な政治のもとで起きた若い世代が背負っている巨額の借金=貸与奨学金の返済軽減へ、政府が決断するときです。

 貸与奨学金の総貸付残高10兆円の半分を国が拠出して減額します。一人ひとりの減額は半分を基本に、年収や残高を勘案して不公平感が起きないようにします。あわせて、返還中を含め、すべての貸与奨学金を無利子にします。残った貸与奨学金は所得に応じた返済制度に切り替えます。

財源は、こうして確保します

 授業料の半減、入学金の廃止、本格的な給付奨学金制度の創設に必要な予算は、毎年2兆円程度です。日本共産党は、すでに、大企業・富裕層優遇の不公正税制の改革や不要不急の財政支出の削減で19兆円の財源を確保し、その一部で学費半減、入学金廃止、給付奨学金の財源をつくることを発表しています。

 奨学金返済の半額免除に必要な経費は5兆円ですが、これは一回限りの経費です。国が借金を「肩代わり」する国債を発行して計画的に返済することができます。岸田政権は、5年間で43兆円にも軍事費を増やすとし、「防衛力強化資金」として、特別会計の剰余金などを使うとしていますが、軍事費でなく奨学金返済の軽減に使います。


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