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2023年6月6日(火)

主張

入管法改悪案

立法根拠は総崩れ 廃案にせよ

 岸田文雄政権が入管法改悪案を参院法務委員会で採択を強行する動きを強めています。改悪案は、国連などから人権侵害と厳しく批判されている現行入管法の弊害を全く改めず、外国人の命を危険にさらす重大な内容です。さらに参院審議では、法案の根幹を揺るがす問題が次々表面化しています。改悪案は廃案しかありません。

難民審査に重大な不備

 改悪案は、難民認定を申請中は送還が停止される現在の規定に例外を設け、3回目以降は申請中の送還を可能にするとしています。このこと自体、迫害の恐れがある国への追放・送還を禁じた難民条約第33条第1項のノン・ルフールマン原則に反しています。

 入管庁は、日本からの退去が確定したのに母国への送還を拒む「送還忌避者」が申請を繰り返していることを問題視します。しかし、3回目の申請で難民と認められた人も過去にいます。母国に送還されれば、死刑になる場合もあります。認定判断を間違い、取り返しのつかない事態を招くことは絶対にあってはなりません。

 ところが、審査に重大な不備があることが参院での審議で浮き彫りになりました。日本の難民認定率が低いのは申請者の中にほとんど難民がいないためだとする政府の主張が崩れたのです。政府が根拠にしたのは、入管庁の審査で不認定とされた人の不服申し立てを審査する「難民審査参与員」の1人、柳瀬房子氏(NPO「難民を助ける会」名誉会長)の発言(2021年の国会の参考人質疑)です。同氏は「見落としている難民を探して認定したいと思っているのに、ほとんど見つけることができない」と述べ、政府はその発言を繰り返し使ってきました。

 しかし、審査件数が柳瀬氏に集中していることが明らかになり、適正な審査ができているのかという疑義が浮上しました。難民審査参与員は現在、学者や弁護士ら111人います。柳瀬氏が全体の処理件数の約4分の1、年1000件超を審査する年がある一方、わずか数件しか審査しない参与員がいました。異様な偏りです。

 柳瀬氏が行ったとする対面審査数も多すぎるという疑問の声が上がりました。認識を問われた斎藤健法相は5月30日の記者会見で一度審査可能と述べたものの、その日の夜「不可能」の言い間違いだったと訂正しました。柳瀬氏の発言の信ぴょう性は大きく揺らいでいます。書面審査だけで大量の審査件数を迅速に処理することを特別に担う「臨時班」の存在も分かりました。政府のいう「慎重な審査」とあまりにかけ離れた姿です。

力を合わせ追い込もう

 大阪入管で、勤務中に飲酒し酩酊(めいてい)した常勤医師による外国人収容者への暴言、不適切な投薬があった疑惑が大問題になっています。法相は2月に把握していながら、隠していたことも分かりました。21年に名古屋入管で収容中に死亡したスリランカ人・ウィシュマさんの事件に根本的な反省がないことを示しています。

 国際法上の難民を難民と認めず、原則収容主義で外国人を非人間的に扱う難民入管行政を大本から変えなければなりません。21年に国民の批判で廃案になった案とほとんど変わらない改悪案を再び廃案に追い込みましょう。世論と運動をさらに広げましょう。


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