しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2023年6月6日(火)

きょうの潮流

 「あたいはやっちょらん」。無実を訴え続けて44年。またも再審の扉は開きませんでした。人生のすべてをかけたたたかいとまともに向き合う覚悟もないのか―▼原口アヤ子さん。1979年、鹿児島県大崎町で義理の弟を殺したとされる罪で懲役10年の刑が確定しましたが、捜査段階から一貫して無実を主張。裁判のやり直しを求めてきた「大崎事件」です▼出所後に再審を請求。それを認める判断を地裁や高裁が3度出しながら、いずれも検察の抗告で取り消されるという異例の経過をたどりました。共犯とされた親族の自白頼みで物的証拠もないにもかかわらず、審理を尽くそうとしない司法や検察の態度に怒りは広がりました▼再審請求の段階で真実の究明に意欲的な裁判官に当たるか外れるか。それに左右される「再審格差」という言葉さえうみだした事件。喜びと失望をくり返す残酷な仕打ちは、再審法改正の切実さを示しています▼国家による最大の人権侵害、えん罪をなくすために証拠開示の制度化や検察による抗告の禁止を求める声は大きい。血の通った法の必要性は、再審開始が認められながらいまだに検察が公判を先延ばしにしている袴田巌さんの例をみても明らかです。ドイツでは半世紀以上も前に再審開始決定にたいする検察の抗告を禁じているといいます▼もうすぐ96歳になる原口さんは認知症が進み入院生活を送っています。話すことはできなくても心の叫びはいまも。殺人犯にされたままで人生を終えてなるものか。


pageup