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2023年6月3日(土)

きょうの潮流

 「81」という数字は将棋の世界では特別の意味をもっているといいます。盤上の9×9の升目に由来し、81歳を迎えた棋士を「盤寿」と呼んでお祝いします▼その数字がついた第81期名人戦で新たな歴史が刻まれました。藤井聡太さんが20歳10カ月の史上最年少で最高峰の座につき、羽生善治さんに続く2人目の七冠を達成。「とても重みのあるタイトル。今後はそれにふさわしい将棋を指さなければ」と思いを語りました▼考えて、考えて、考えぬく、読みの深さと速さ。これまで最年少記録を保持してきた谷川浩司永世名人が著書『藤井聡太はどこまで強くなるのか』で説いています。つねに最善手を求め、相手の得意な戦法を避けたりせずに正々堂々とたたかう。その姿勢は将棋の理想であるとも▼AI(人工知能)の評価値が描く右肩上がりのグラフは「藤井曲線」といわれます。ベストな手を指し続けてつかむ勝ち方。それはAIを駆使するだけでなく、地力でたどり着いた地平といえるでしょう▼なぜ強くなりたいのか。「自分が強くなることで、いままでと違う景色をみることができたら」と答えていた藤井さん。トップ棋士との対局やタイトル戦を重ねることで高みをめざす景色はさらに広がっています▼江戸時代から連綿と引き継がれてきた名人の系譜。その歴史は人間の知力を示す証しでもあるでしょう。藤井新名人の初めての揮ごうは「温故知新」。故(ふる)きを温(たず)ねて新しきを知る。盤上の真理を探究する無限の旅を楽しみながら。


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