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2023年6月1日(木)

主張

同性婚否定は違憲

婚姻の平等へ法制化を進めよ

 同性同士の結婚を認めない民法などの規定は憲法違反だと愛知県の男性カップルが国に損害賠償を求めた訴訟で30日、名古屋地裁は違憲とする判断を示しました。異性カップルにのみ法律婚制度を設け、同性カップルには関係を保護する枠組みすら与えていないことは、法の下の平等を定めた憲法14条と、婚姻に関する法制定で個人の尊厳に基づくことを求めた24条2項に反するとしました。同性婚否定の違憲性を問う訴訟では2021年に札幌地裁が14条違反としました。14条に加え24条にも反するとしたのは今回初めてです。国に法制化を迫る重要な判断です。

憲法24条違反と初の判断

 名古屋地裁判決は、自治体のパートナーシップ制度導入の広がりや諸外国での同性婚制度の制定の動きなどを挙げ、「男女間の結婚を中核とした伝統的な家族観は唯一絶対のものではなくなり、同性カップルに対する理解が進み、これを承認しようとする傾向が加速している」と述べました。その中で、同性愛者を法律婚から排除することで大きな格差をつくっていることの合理性は揺らいでおり、「無視できない状況」と指摘しました。

 憲法24条2項は、婚姻や家族についての法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して制定されなければならないと規定しています。判決は、婚姻の本質について当事者2人が「真摯(しんし)な意思を持って共同生活を営むこと」にあり、その価値にかかわる「重要な人格的利益」を強調しました。

 法律婚は、重要な人格的利益を実現するための制度とされます。しかし、同性カップルは、「法律婚に付与されている重大な人格的利益から排除されている」(判決)状況に置かれています。これを放置することは、「個人の尊厳」に照らして合理性を欠き、「国会の立法裁量を超える」として24条2項違反と結論づけました。

 しかも、法律婚制定から70年以上の長期にわたり、少なくない人口の同性カップルに対して利益の保護の枠組みが与えられていません。判決が、個々のカップルが重大な人格的利益を享受できないだけでなく、「その総体としての規模も期間も相当なものであるから…同性カップルに対する保護がなされない影響は深刻なもの」とも記したことを政府は真剣に受け止めなければなりません。

 同性婚を認めない民法などの規定をめぐっても、名古屋地裁判決は、同性カップルに対して「性的指向という自ら選択・修正できない事柄を理由として、婚姻に直接的な制約が課せられている」と認定し、憲法14条違反であることを明確にしています。賠償請求は棄却したものの、政府の立法不作為を厳しく批判した判決には大きな意義があります。

政府の認識の遅れは明白

 同様の訴訟は5地裁で起こされています。札幌地裁が違憲とした他、東京地裁(22年)は違憲状態としました。大阪地裁(22年)は合憲としたものの、将来的な違憲の可能性をにじませました。司法判断の流れは明確です。

 岸田文雄首相は「社会が変わってしまう」などと同性婚法制化を拒む姿勢を改めるべきです。日本は、主要7カ国(G7)で唯一、同性婚を認めていない国です。いまこそ立ち遅れを克服するために法制化に踏み切るべきです。


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