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2023年5月29日(月)

主張

飲む中絶薬・避妊薬

女性の権利と健康守るために

 子どもをいつ何人産むのかは、妊娠・出産の当事者である女性の自己決定権を尊重しなければならない―リプロダクティブ・ヘルス&ライツ(性と生殖に関する健康と権利)と呼ばれる考え方は、20世紀半ば以降の国際的な人権保障の流れの中で確立されてきた、基本的人権です。ジェンダー平等後進国である日本は、この分野でも大変な遅れを抱えています。

国際水準から遅れた日本

 日本は先進国の中でも避妊の実行率が低いとされます。避妊法は失敗率も高く、男性に選択権があるコンドームが主流で、女性が主体的に使える経口避妊薬(低用量ピル)や子宮内避妊具(IUD)はほとんど普及していません。

 避妊の失敗や性暴力による望まない妊娠を防ぐ緊急避妊薬も、諸外国では薬局で買えますが、日本では医師の処方箋が必要で、費用も1万~2万円と高額です。

 中絶法は、世界保健機関(WHO)が「時代遅れで、やめるべきだ」と指摘する、掻爬(そうは)法という外科手術が今日まで主流となってきました。費用も妊娠初期で10万円前後、中期で約20万~40万円もかかります。まるで“無計画に妊娠した罰”のようなありようが、女性たちの心身を傷つけてきました。

 法律の遅れも顕著です。刑法には、女性が自分で中絶することを罪に問う堕胎罪があります。指定医のもとでの中絶を合法化している母体保護法には、中絶への配偶者の同意要件が定められています。子どもは家長のものとされ、結婚した女性は家の跡継ぎを産むことが義務とされ、自己決定権はなくて当然と扱われた、明治時代の名残です。

 女性が、自分の体と人生に大きな影響を与えることについて、自分で決められない―いつまでもこのような状況を続けていいはずがありません。国連の社会権規約委員会は2016年の一般勧告22号で、性と生殖に関する健康に対する女性の権利を実現することは、「女性のさまざまな人権を実現する上で、極めて重要」「女性の自律、及び自分の人生や健康について有意義な決定を行う女性の権利に不可欠」と強調しています。日本がこの水準から大きく立ち遅れていることは明らかです。

 今年4月、日本でもようやく飲む中絶薬が承認され、5月から販売が始まりました。ただし当面は入院施設のある医療機関での処方に限られ、価格も入院費とあわせると現状の中絶手術並み、10万円前後となる恐れがあります。日本共産党の宮本徹議員は10日、衆院厚生労働委員会で「これでは中絶が必要な人がアクセスしづらい状況は変わらない」と述べ、無償化や自己負担額の抜本的な引き下げを求めました。

「薬局販売を」の声聞け

 緊急避妊薬の薬局販売についても厚労省の専門家会議で検討が重ねられています。年末年始に行われたパブリックコメントでは、4万6300件もの意見が集まり、薬局販売に賛成が97%を占めました。しかし、5月の検討会議では、結論はまたも先送りされ、失望の声が上がっています。

 政府の足取りが鈍い一方、ジェンダー平等への世界の流れを背景にした女性たちの運動の広がりは目覚ましいものがあります。女性の権利と健康を前進させるため、世論を強めることが必要です。


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