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2023年5月26日(金)

主張

入管法改正野党案

人権侵害をただし国際基準に

 岸田文雄政権が提出した入管法改悪案に対し、日本共産党、立憲民主・社民、れいわ、沖縄の風の野党4会派が、難民等保護法案と入管法改正案を参院に共同提出しました。野党案は、現行入管法で国際法上の難民を難民と認めず、外国人を恣意(しい)的に拘禁し、国際法違反だと国連などから厳しく批判されている点を根本から改めることを打ち出しています。参院法務委員会に政府案と同時に付託され、並行して審議されています。当事者の声を審議に生かし、野党案を成立させることが必要です。

根本的解決に向けて

 政府案は、入管庁作成の「難民該当性判断の手引」を踏まえ、難民認定を適正に判断すると言います。しかし、入管庁の難民審査は、申請者に詳細な主張立証を求め、民主化運動のリーダー格でなければ「迫害されるおそれ」を認めないなど極めて限定的です。衆院の参考人質疑では出身国情報の把握の弱さが指摘されました。

 難民等の要保護性を判断する難民審査と、不正調査や収容・送還を主な業務とする入国審査を同じ組織の下で行うことは、構造的な矛盾です。政府案では難民認定の適正化はできません。強制送還ありきでは国際人権法違反です。

 野党案は入管庁から難民行政を切り離し、法務省の外局として独立した難民等保護委員会を新設します。保護すべき対象を、条約難民、補完的保護対象者、無国籍者とし、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の見解を踏まえ定義します。難民等保護委員会規則で定め、外国人の保護を図ります。

 難民審査では、外国語資料の提出を認め、申請手続きが当該外国人に過重な負担を課すものとならないよう十分配慮します。当事者の主張立証のみでは難民認定が困難な場合であっても、実情に即した適切な判断を行うことを求めています。審査をUNHCRの見解に即した規則に委ね、外国人の人権保障に貢献するものです。

 政府案では、退去強制対象者の収容期間に上限がありません。自ら出国の意思を示さない限り、収容が継続されます。2007年以降少なくとも、18人が収容中に亡くなりました。名古屋入管ではスリランカ人ウィシュマさんの死亡事件が起きました。真相究明を拒む入管に命や尊厳を預けることはできません。収容に代わる監理措置制度は、支援者に外国人を監視させる非人道的な制度です。監理人になる支援者がいなければ収容されます。原則収容主義は全く変わりません。

 野党案は、退去強制対象者の拘束・収容には、裁判所の出す容疑者収容許可状または退去強制対象者収容許可状を必要とします。いずれも「逃亡し、または逃亡すると疑うに足りる相当の理由があるとき」が要件です。原則収容主義を改め、身体拘束の必要性・合理性の司法判断を必須とします。退去強制対象者の収容期間の上限を6カ月と定めます。

政府案は廃案しかない

 政府案に反対する行動は全国で取り組まれ、21日の東京・渋谷のデモと集会には7000人以上が参加し、改悪は絶対させないと訴えました。2年前に廃案になった法案とほぼ同じ政府案を廃案に追い込みましょう。野党案の成立で国際人権基準にかなうよう、入管行政を根本から改めましょう。


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