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2023年5月25日(木)

主張

増加する空き家

有効な活用促す取り組みこそ

 空き家の増加が各地で問題になっています。深刻なのは、居住する目的がないため維持・管理されない恐れのある空き家の増加です。管理不全の空き家を放置することは、防災・防犯や公衆衛生、景観など近隣の住生活の環境に悪影響を与えます。実効性のある対策が急がれます。

20年前からほぼ倍増

 日本の空き家総数は2018年時点で849万戸です。うち居住目的のない空き家は349万戸に達し、20年前からほぼ倍増しています。その中で一戸建てが7割以上、腐朽・破損のあるものは101万戸とされます(2月公表の国土交通省の審議会報告書)。

 人口減少と高齢化が進む中で、空き家数がさらに増加していくことは避けられません。国交省は、居住目的のない空き家はこのままでは2030年に470万戸程度にまで増えると推計しています。

 15年に空き家対策特別措置法が施行されました。同法は、周囲に悪影響を与える空き家を自治体が「特定空家」と認定して解体し、費用を所有者に求めるなどの内容です。施行後、各自治体で対策が続くものの、空き家増加に歯止めをかける状況ではありません。

 同特措法の改正案が今国会に提出され、12日に衆院本会議で全会一致で可決され、参院に送られました。改正案は▽空き家の活用拡大のため市区町村が地域を定め、店舗などへの用途変更を促進できるような特例を設ける▽放置すれば周囲に悪影響を与える「特定空家」になることを未然に防ぐため、市区町村が指導・勧告などをできるようにする▽「特定空家」の除去を円滑にできるようにする―ことを盛り込んでいます。国が自治体と協力し、解決に向けて責任を果たすことが求められます。

 空き家を有効活用するために知恵と力を尽くすことが重要です。国交省の2月の審議会報告書も「なるべく早い段階で活用する」考え方を強調しています。少なくない自治体では、物件情報を検索できる空き家バンクを設けて所有者と利用を望む人をうまく結びつける努力を続けています。住宅リフォームへの補助、中古住宅の流通を促す施策も欠かせません。

 低所得者に適切な住宅を提供する施策に空き家をいかすことも大切です。国は17年に住まい確保に困る人と空き家をつなぐ、住宅セーフティネット制度という自治体が運営する仕組みをつくりました。空き家登録件数は約85万戸ですが、実際に居住者に提供されたのは21自治体298戸(21年度)とごくごくわずかです。住宅困窮者対策としての役割を全く果たしていません。国は、自治体や貸し手の負担が大きいデメリットなどの問題を改め、制度が機能するようにすべきです。

住宅政策の転換不可欠

 空き家増加の背景には人口減だけでなく、日本の住宅政策の問題があります。歴代政府は国民を持ち家取得に誘導することを経済政策の柱に位置付けてきました。いまも新築住宅への税優遇など政策の基本は変わりません。住宅数が世帯数を上回る中で新築偏重の政策は、空き家対策と両立しません。ひたすら新築をつくるスクラップ・アンド・ビルドの住宅政策を見直す時です。都市計画などで成長を管理する秩序あるまちづくりに転換することが重要です。


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