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2023年5月23日(火)

きょうの潮流

 今年は童話作家で詩人の宮沢賢治没後90年です。晩年の賢治が過酷な朝鮮人労働者の状況に胸を痛めて書いた詩があります。短い二連の文語詩「いたつきてゆめみなやみし」で、題は重い病気で夢もまったく見なくなったという意味です▼「その線の工事了(おわ)りて、あるものはみちにさらばひ、あるものは火をはなつてふ、かくてまた冬はきたりぬ。」病床で聞いた朝鮮人行商人の太鼓の思い出に続く二連目です▼下書き原稿によれば、賢治は新聞で朝鮮人労働者の状況を知ってこの詩をつくりました。賢治の読んだ記事は1932年5月に矢作(やはぎ)村(現陸前高田市矢作)で起きた朝鮮人虐殺事件の記事ではないか。そう教えてくれたのは盛岡市の元中学校教師、高林勝さんです▼当時、大船渡線の工事で500人以上の朝鮮人労働者が酷使され、工事が終わると一方的に解雇されていました。朝鮮人たちは待遇改善を求めてストライキを決起。請負会社は暴力団を組織してツルハシやマサカリで朝鮮人の宿舎を襲い、死者3人、重軽傷者20人超の犠牲が出ました▼「賢治は文語詩のぎりぎりまで削った表現で朝鮮人に対する日本人の仕打ちの不正義を告発した」と、高林さんはいいます▼公開中の映画「銀河鉄道の父」は、家族思いの優しい賢治像を描きます。しかし賢治は、この詩以外にも白象を酷使した資本家に反撃する「オツベルと象」のような童話を残しました。「静かに激しく正義の怒りを燃やす賢治をもっと語るとき」。高林さんの言です。


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