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2023年5月22日(月)

核兵器 気候危機 飢餓… 「G7は失敗した」 市民社会 存在問う声

広島サミット閉幕

 被爆地・ヒロシマで行われていたG7広島サミットが閉会したことを受けて21日、環境問題やジェンダー平等などに取り組む団体が広島で会見を開き、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)などはオンラインで会見を開きました。

被爆者団体「核抑止」論に失望

戦争あおるような会議 日本被団協

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(写真)記者会見する(左上から右へ)木戸、田中、濵中、(左下から右へ)児玉、和田、濱住の各氏=21日

 日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)はオンラインで記者会見し、被爆地広島から核兵器に固執する宣言を出したことを受けて、木戸季市(すえいち)事務局長は「いちるの望み、希望を完全に打ち砕かれて、今は怒りに震えている。核抑止論に立った議論で戦争をあおるような会議になった」と訴えました。

 田中熙巳(てるみ)代表委員は「核兵器禁止条約に全く触れていない。核兵器を持つ国は減らす努力をはっきり出してほしかった。残念でなりません」と語りました。

 児玉三智子事務局次長は「広島ビジョンには禁止条約も核兵器廃絶の言葉もない。一人ひとりの命、顔を思いながら議論してほしかった」と求めました。

 和田征子事務局次長は「78年間私たちが抱えてきた願い、思いを踏みにじるような議長国だったということを世界に広めた」と批判しました。

 濵中紀子事務局次長は「核は防衛目的のために役割を果たす、としており、本当に核廃絶のためのG7だったのか疑問に思う」とのべました。

 濱住治郎事務局次長は「原爆は非人道的で、絶対悪の兵器だ。核兵器廃絶は最終目標だというのはとても考えられない。最優先課題だ」と強調しました。

死者に対する大きな罪

サーロー節子さん

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(写真)記者会見するサーロー節子さん=21日、広島市中区

 広島の被爆者でカナダ在住のサーロー節子さんは、首脳声明などについて、「7人の各国首脳が広島まで来てこれしか書けないとは、胸がつぶれるようです。死者に対する大きな罪だと思う」。G7広島サミットについて「失敗だった」と痛烈に批判しました。

 さらに、この声明は一方的であり、悪いのはロシアや北朝鮮、中国だとして、保有国である自分たちのことは書いていないと指摘。また、世界の軍縮について、核兵器禁止条約があることが書かれていないと批判しました。

 「すばらしい禁止条約を日本や核保有国は認めようとしない」と語り、「核兵器廃絶に向けて、市民と政府が一緒になって考えることを続けてほしい」と訴えました。

 また、不戦の地「広島」で多くの人の命を奪う武器供与の議論が行われていることについて、「戦争準備ではなく外交を通じて話し合いをすべきです」と語りました。

岸田首相の責任大きい

日本原水協

 原水爆禁止日本協議会(日本原水協)は、「被爆者と国民の核兵器禁止・廃絶の声に背を向けたG7首脳に抗議する」との表題の安井正和事務局長談話を発表しました。

 談話は、核兵器の廃絶を「究極の目標」として先送りし、「核兵器は防衛目的のために役割を果たす」と「核抑止力」論を公然と宣言したことは極めて重大だと指摘。議長である岸田首相の責任は大きく、被爆地出身の総理の資格はないと批判しています。

 インドネシアのジョコ大統領が唯一、広島会合の使命として核兵器の廃絶を呼びかけるよう、求めたことを評価し、「廃絶の国民世論を高めるためにいっそうの努力を強めたい」と表明しています。

NGOから相次ぐ批判

ジェンダー平等に課題

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(写真)さまざまな要求を掲げるW7、P7の人たち=21日、広島市内

 ジェンダー平等やフェミニスト分野で日本政府に提言を行ったW7(ウーマン7)とLGBTQなど性的少数者の人権保護などを提言したP7(プライド7)は、広島市内で会見し、首脳声明と関連文書について懸念や課題があることなどを指摘しました。

 W7の三輪敦子共同代表(国連ウィメン日本協会副理事長)は、ジェンダー平等という言葉は国際的な原則、共有すべき価値観だと前文で言及されているが、とるべき具体的ステップではジェンダー平等が含まれず2021年、22年に比べ、位置づけが弱まっていると懸念を示しました。

 ジェンダー平等、女性と少女について焦点が当たっているが、全体を通じて財源が示されていないと批判しました。

 P7のLGBT法連合会の神谷悠一さんは、声明について「ドイツの水準に押しとどめた」と述べる一方で、ジェンダー平等が努力義務になっていることや自民党提案のLGBT法案について問題があることなどを指摘しました。

 マリッジ・フォー・オール・ジャパンの寺原真希子共同代表は、法律上の性別変更の際に非人道要件を課していることなどを指摘。LGBTQなど性的少数者が暴力や差別なく生きることができる社会の実現に向けて法整備が必要だと語りました。

化石燃料依存を脱せず

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(写真)記者会見する環境NGOの人たち=21日、広島市

 主要7カ国首脳会議(G7広島サミット)の首脳声明を受け、気候変動問題に取り組む日本国内の環境NGOは、広島市内で記者会見し、「不十分だ」「G7は化石燃料依存から抜け出せない」などと訴えました。

 「350.org Japan」の伊与田昌慶氏は「G7は気候危機の緊急性への対応に失敗した」と指摘。「ただ、不十分な首脳声明ですら、日本の気候政策に対するメッセージは大きい」と述べ、化石燃料と原子力に依存する日本の政策転換が迫られていると語りました。

 グリーンピース・ジャパンの小池宏隆氏は「再生可能エネルギーの目標値が設定された」などの成果をあげる一方、「気候変動の進展状況を踏まえると、合意内容は十分とは言えない」と述べました。

 気候ネットワークの田中十紀恵氏は4月の環境大臣会合の合意内容を「踏襲したもの」と指摘しつつ、再エネの数値目標などが言及された点など「前向きにとらえていい」と語りました。

 「環境・持続社会」研究センターの遠藤理紗氏はエアコンなどに使われ、急激に使用が増えているフロンガスにふれ、今年11月から開かれるCOP28(第28回国連気候変動枠組み条約締約国会議)に向け、「CO2とともに他のガスも地球規模で削減できるよう世界の国々に働きかけたい」と述べました。

 クリーンライティング連合の有川真理子氏は水銀が使われている直管型蛍光灯の廃止に日本政府が反対しているとし、10月の水俣条約第5回締約国会議に向け、「水俣病を経験した国として、日本政府は世界に恥じない行動を」と訴えました。

食糧・債務危機 深刻化

 国際NGOのオックスファムは、主要7カ国首脳会議(G7広島サミット)に対する見解を示し、新興・途上国の「グローバル・サウス」問題に取り組むことに失敗したと批判しました。

 G7広島サミットでは、グローバル・サウスへの対応を重視するかのようにG7以外の国々との協議を行いました。

 オックスファムのマックス・ローソン不平等政策責任者は深刻化する新興・途上国での債務問題について「G7は債務の放棄を行わず、世界規模で急増する飢餓を止めるために真に必要なことを見つけそこねた」と批判しました。グローバル・サウスの国々は大規模な食糧危機と債務危機に陥っています。東アフリカでは毎分2人が餓死しています。ローソン氏は「国民を養う代わりにG7諸国とその銀行家に1日2億ドル以上を支払っている」と指摘しました。

 ドルでの借り入れのため、金利の上昇によって支払額が急増しています。ローソン氏は「資金がグローバル・サウス諸国からG7諸国に流入するのは間違った方向だ」と強調しました。

「世界の分断と対立加速」

G7にNGO指摘

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(写真)首脳宣言を5段階評価するNGOの人たち=21日、広島市内

 C7は21日、広島市内でG7首脳声明の評価について緊急記者会見を行い、アジア太平洋資料センターの内田聖子共同代表は「最低」評価をつけました。「G7は必要なのか」と指摘し、「G7は経済的、政治的に影響力を失っており、貧困、金融、債務など自分たちがつくってきた課題を解決できなくなっている。G7は解消すべきだ」と主張しました。

 また、経済安全保障について「中ロに対するデカップリング(分断)政策だ」と指摘。「(新興・途上国の)グローバル・サウスを取り込み、別の経済圏を作るもので、世界の分断と対立がサミットを機に進むことを懸念している」と警鐘を鳴らしました。

 日本アフリカ協議会の稲葉雅紀共同代表はG7が適切な医療体制の確保に失敗しているとして「G7の限界が示された」と言及。コロナパンデミック(世界的大流行)の際に浮き彫りとなったワクチン、検査、治療薬のアクセスでの先進国と新興・途上国の格差是正が求められています。しかし共同声明は「期待に応えられなかった」。

 核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)の川崎哲会長は「大変失望している」と表明。「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」(19日)について、「自分たちの核兵器は『防衛目的』『抑止力』として正当化した。広島、被爆者を踏みにじった」と言葉をとがらせました。

 この他、気候・環境正義、人道支援、「しなやかで開かれた社会」の各観点でも失望や批判が相次いで語られました。

 同日には、被爆者、入管問題、女性と性的少数者の人権問題など市民団体の会見や行動が相次いで行われ、G7に市民の声を突きつけました。


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