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2023年5月21日(日)

主張

国交省人事介入

天下りの実態を徹底解明せよ

 国土交通省の元事務次官が、同省と関係の深い民間企業の人事に介入していたことは曖昧にできない問題です。役所の立場を利用したのは明白で、国交省が組織的に関わった疑惑も浮上しています。官民癒着の温床になっている天下りを放置し続けることは許されません。岸田文雄政権の責任で徹底的に解明すべきです。

「省の意向」ほのめかす

 人事介入問題は「朝日」(3月30日付)が報じました。国交省元次官の本田勝氏(東京メトロ会長)が昨年12月、羽田空港などのビルを運営する「空港施設」の首脳に、山口勝弘副社長(国交省元東京航空局長)を社長にするよう求めました。本田氏は、自らを「有力なOBの名代」と説明したとされ、別の元次官2人ともやりとりしていました。「朝日」報道の2日前に本田氏は国交省の久保田雅晴航空局長と会食しており、現役幹部の関与の疑いは深まります。

 山口氏は空港施設取締役だった一昨年、役員人事を話し合う会議で、自身の副社長への就任を求め、実現したとされます。同氏は問題発覚直後の今年4月初め、副社長を辞任しました。

 空港施設の事業では、国有地(空港用地)の使用許可など国交省が多くの許認可権を持っています。同社設立の1970年から2021年まで国交省出身者が代々社長だったといいます。国交省の天下りの受け皿の一つだったことをうかがわせます。

 この問題での同社の独立検証委員会は4月28日、報告書を発表しました。▽山口氏が副社長に就かないと国交省と関係が悪化する恐れがあると強く示唆する発言が同氏からあった▽同氏の言葉の端々に国交省現職の意向を感じ取り、恐怖を覚えた人が複数いた―などと記されています。

 報告書には、山口氏が国交省の現役職員から未公表の人事情報を受け取っていたとあります。同省は12日、その事実を認めました。異動先、前任者と後任者をつなぐ線などが記載された「線引き」と呼ばれる内部資料は、慣習的に職員らで広く共有され、外部の省出身者にも送られていたと説明します。再就職を目的とする企業側への情報提供を禁じた国家公務員法の規定に反する疑いは濃厚です。

 国交省では11年、現役幹部による天下りあっせんが日本共産党の塩川鉄也衆院議員の追及で判明しました。当初、国交省は「あっせん行為はない」とする調査結果をまとめました。しかし、13年に第三者機関である再就職等監視委員会は、違法行為と認定しました。省内調査任せでは解明できないことは明らかです。斉藤鉄夫国交相は19日、本田氏と航空局長の会食について再就職等監視委員会に調査を依頼する考えを示しました。今回の人事介入の解明に後ろ向きの姿勢を反省すべきです。

厳格に規制する法改正を

 天下りは、国交省だけではありません。全ての省庁で実態調査を行い、構造的な問題を明らかにすることも不可欠です。

 今回の人事介入問題は、元官僚を介した再就職のあっせんを規制できないなど現在の国家公務員法が抱える重大な欠陥を改めて浮き彫りにしています。抜け穴をふさぐとともに、天下りを禁止し、厳格に実行できる法改正が急務となっています。


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