2023年5月14日(日)
きょうの潮流
まばゆいカクテル光線のなか、無数の応援旗が翻り、チアホーン(応援用のラッパ)の音が鳴り響く―。熱気あふれる旧国立競技場で、新時代を体感しつつ開幕戦を見つめていたことを思い出します。1993年5月15日、日本初のプロサッカーが産声を上げました▼Jリーグが30周年を迎えました。世界的な選手がプレーし、名勝負も生まれました。クラブ数も当時の10から60へ。選手の技術レベルが上がり、ワールドカップでドイツやスペインを破るまでに。その進歩は著しい▼リーグはスポーツ界に変革をもたらします。地域密着はその一つです。当時、どの競技もチームは企業名が当たり前。企業の管理下で、その広告宣伝費がチームの運営費でした▼Jリーグはそこから脱却し企業名を排して地域名とし、自立を目指します。「空疎な理念」と抵抗する企業もある中、当時の川淵三郎チェアマンは「チームが根差しているのは企業ではなく、地域だと示す」と信念を貫きました。以来、クラブは増え続け、理念は他競技にも広がっています▼フェアプレーを浸透させる努力も興味深い。ある年のリーグ表彰式、フェアプレー賞受賞選手がスピーチしました。「サッカーに必要なのは相手を思いやる心。いつも僕はレフェリーや相手選手をリスペクト(尊重)し、ともにゲームをつくっている」。リーグの追求する信条を選手が体現しています▼日本のスポーツ界を突き動かし、共鳴し合った30年。新たな歩みを、この後も目に焼き付けたい。








