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2023年5月13日(土)

主張

子育て安心社会

ジェンダー平等推進の視点を

 岸田文雄政権が掲げる「次元の異なる少子化対策」に期待できないと国民の多くが感じています。子どもを産み育てづらい社会にしている構造的問題を真剣に打開する姿勢が見えないからです。日本を出産・子育てに「冷たい国」にした大きな要因の一つは、女性にばかり負担を強いる固定的な性別役割分担が政治・経済・社会の各分野に深く根を張っていることです。岸田政権はここに本格的にメスを入れようとしていません。安心の子育て社会の土台にジェンダー平等を推進する視点を据えることが必要です。

国連人口基金からの指摘

 国連人口基金(UNFPA)は今年の「世界人口白書」(4月19日公表)で、「少子化」に悩む国ぐには、ジェンダー平等の推進で社会や経済の発展を図ることが重要だと提言しました。

 白書では、出生率が低い国について「職場や家庭でのジェンダー不平等、共働き家庭への構造的な支援の欠如」という要因があるとし、出生率が高い国と対照的だと指摘しています。出生率が低い韓国や日本については、結婚や出産をためらう両国の女性の声を紹介しつつ、伝統的に子どもの世話や家事の責任を女性1人が担っている現状を記しています。

 白書発表の声明文の中でUNFPAのナタリア・カネム事務局長は、低出生率の国の政策について「十分な数の子どもを産んでいないと女性を責めていては、人権を守りつつ実行することのできる、より現実的な案を見落とすことになる」と強調し、「労働市場でのジェンダー平等を達成し、子育て支援を拡大し、労働力不足を補うために移民を受け入れることで、より生産性を高めることができる」などと述べています。

 各国の男女格差を示すジェンダーギャップ指数でみると、日本は146カ国中116位と極めて低い水準です。内閣府などの分析では、ジェンダーギャップの小さいアイスランドやスウェーデン、フランスなどは合計特殊出生率(女性1人が生涯に産む子どもの人数の推計)が高くなっています。

 日本で「少子化」が政治の重要課題になってから30年以上が経過しています。「男性は仕事」「女性は家庭・子育て」という性的役割分担の解消は早くから言われ続けていますが、抜本的な改善は図られません。

 背景にあるのは、明治憲法下での男尊女卑の家族制度を「伝統的」などと美化する自民党政治です。仕事と子育ての両立を困難にさせる異常な働き方を強いる経済社会もゆがみをもたらしています。これらを大本から正さなくては、若者は希望を持てません。

希望が実現する政策急げ

 世界人口白書は、人権やリプロダクティブ・ヘルス&ライツ(性と生殖に関する健康と権利)が侵害されてはならないと強調します。子どもを産むか産まないか、いつ産むか、何人の子どもを持つかは、それぞれの女性、それぞれのカップルが選択し、決めることであり、その権利は保障されなくてはなりません。

 出産・子育てを希望しているのに、その実現を妨げている壁を取り除くのは政治の役割です。政府の長年の対策の立ち遅れで、結婚・出産をあきらめる若い世代が増加していることは深刻です。事態打開へ政府の責任は重大です。


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