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2023年5月11日(木)

主張

苦境の中小企業

下請けいじめ許さない対策を

 コロナ禍や原材料価格の高騰により中小企業の苦境が続いています。とりわけ下請け中小企業にとっては、親企業との取引でコスト上昇分を製品の価格に転嫁できないケースが問題となっています。

 力の強い大企業が立場の弱い中小企業へしわ寄せをするのは、許されません。早急な対策が求められます。

価格転嫁に応じぬ親企業

 政府の「2023年版中小企業白書・小規模企業白書」(4月28日公表)は、新型コロナや物価高騰、深刻な人手不足などで、中小や小規模の事業者が引き続き厳しい状況にあるとの認識を示しました。その要因のひとつとして「中小企業製造業は大企業と比べ、価格転嫁ができていない」ことを指摘しています。

 中小企業庁は昨年12月、中小企業約1万5千社から回答を得た価格転嫁についての調査結果を発表しました。同調査によると、受注した中小企業のコスト上昇分に対し、発注した企業がどれだけ価格転嫁に応じたかの割合を示す「価格転嫁率」は、46・9%でした。平均でコスト上昇分の半分以上が転嫁できていません。「全く価格転嫁できていない」との回答は2割超でした。

 中小企業庁の調査官の聞き取り調査(昨年10月、約1800社)では、「以前から、価格交渉はできるものの、価格転嫁には応じてもらえなかった。原材料等の上昇を機に、改めて昨年夏頃から現在まで4、5回値上げ要請を行ったが、全て却下された」(機械製造)「取引先が競合他社との相見積もりをちらつかせるため、取引中止の懸念があり、価格交渉は5年ほど行っていない」(卸売り)などの声が寄せられました。

 親企業による「買いたたき」など不公正な取引を横行させてはなりません。労務費や原材料費、エネルギーなどのコスト上昇分を下請け企業などの取引価格に反映させず、すえ置くことは独占禁止法上の「優越的地位の乱用」にあたる可能性があります。

 公正取引委員会は昨年12月、転嫁の協議をしなかった佐川急便やデンソーをはじめ13社・団体の名前を公表しました。しかし、政府の取り組みは限定的で下請けいじめを取り締まる対策の抜本的強化が欠かせません。適正な取引単価を保障するため下請振興法に実効性を持たせるべきです。

 中小企業庁は、先の白書で「賃上げを促進する上では、価格転嫁と生産性向上が重要」だと述べています。同庁の12月調査では、労務費を「全く転嫁できていない」と回答した中小企業は29・5%です。民間調査会社の東京商工リサーチの「賃上げに関するアンケート」(2月公表)では、賃上げをしない理由として、「コスト増加分を十分に価格転嫁できていない」が58%と最多でした。この実態は直ちに正されなくてはなりません。

構造的なゆがみを正せ

 日本経済の主役である中小企業の本格的な賃上げを実現してこそ、経済を再生させて好循環に導くことができます。

 大企業がためこんだ総額500兆円超の内部留保への課税を通じて、中小企業の賃上げをはかることが欠かせません。

 同時に、下請け企業いじめが後を絶たないゆがんだ構造を抜本的に是正する必要があります。


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