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2023年5月9日(火)

国は赤字ローカル線存続を

改定地域公共交通活性化・再生法

 赤字ローカル鉄道の在り方を話し合う「再構築協議会」の設置などを盛り込んだ改定地域公共交通活性化・再生法が成立(4月21日の参院本会議、日本共産党は反対)しました。今後、日本各地で、採算が困難なローカル線の存廃にむけた再構築協議が行われる見通しです。公共交通の役割をないがしろにした「廃止ありき」でなく、住民や地方自治体の意見を反映した議論が求められます。

 改定法は、各地域で、国が主導して「再構築協議会」を設け、地元自治体と事業者が話し合う仕組みを創設。「鉄道維持」「バス等への転換」などに両者が合意した場合、「再構築方針」をまとめます。

62路線が対象に

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(写真)高橋千鶴子議員

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(写真)田村智子議員

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(写真)桜井徹参考人

 JR各社(東海を除く)は昨年、輸送密度(1キロあたり1日の平均利用者数)2000人未満の赤字線を発表。これに合わせるように、国土交通省の「有識者検討会」は昨年7月、「輸送密度1000人未満」を協議の対象とする提言を出しました。1000人未満は62路線、103区間(国交省)にのぼります。改定法は提言を受けたものです。

 日本共産党は改定案の国会審議で多くの問題点を明らかにしました。

 斉藤鉄夫国交相は改定案審議を前に、ローカル線は「半分以上残る」と発言し、多くのローカル線が淘汰(とうた)される可能性があると認めました。高橋千鶴子議員が衆院本会議(3月14日)でこの発言について追及すると、斉藤国交相は「一定数は存続」するとの意味だとして、廃止でバスなどへの転換が進むとの考えを示しました。

 田村智子議員は4月20日の参院国交委員会で、廃止後にバス路線に転換された北海道のJR日高線(鵡川―様似間)は、「混雑し乗れない」「遅い」など利便性が悪化していると、地元で実施されたアンケートに基づき指摘。高橋議員は3月10日の衆院国交委で、JR札沼線(北海道医療大学―新十津川間)はバスへの転換のわずか2年半後の昨年9月にそのバスさえ廃止された事例をあげました。

 参院国交委での参考人質疑(4月18日)では、桜井徹日大名誉教授が「鉄道事業は公益事業であると理解する必要がある」と指摘し、赤字だからと安易にローカル線を廃止するのではなく、総合的なインフラ投資計画を持ち廃止路線を復活させたドイツの経験に学ぶ必要があると説きました。

共産党が修正案

 日本共産党は衆参国交委員会でそれぞれ、(1)再構築協議会が作成する方針を「鉄道輸送の維持・高度化」に特化させる(2)JR各社のローカル鉄道に関する施策について国が責任をもって維持・存続させる義務を明確にする(3)鉄道事業の廃止にかかわる手続きを「届出制」から「許可制」に戻す(4)鉄道・タクシーの協議運賃制度の規定を削除する―などの修正案を提出しました。

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(写真)徳島駅に停車中のJR四国牟岐線の車両。阿南以南は輸送密度1000人未満の区間(遠藤誠二撮影)

 修正案の趣旨説明(4月20日の参院国交委)で田村氏は、「(法案は)鉄道が有している公共性、広域性、ネットワーク性の視点がなく、狭い視野で廃線に導き、鉄道網を切り刻んでしまう」と警告し、事業全体で不採算路線の運行を維持させる「国鉄分割民営化時の制度設計が維持できないなら、ローカル鉄道廃線ではなくJRの在り方そのものを根本から問うべきだ」と主張しました。

 修正案は、日本共産党、れいわ新選組以外の会派の反対で否決されました。

 東京一極集中、大都市圏での大型開発優先、高速道路など道路偏重の予算配分、リニア建設、新幹線など「ドル箱」路線優先―ローカル線の危機は政府の政策が招いた問題です。国は、責任を持ち維持・存続させ、地方再生の手段として活用すべきです。


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