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2023年5月8日(月)

きょうの潮流

 「すべてが終わったとき、本当にぼくたちは以前とまったく同じ世界を再現したいのだろうか」。人類が危機に直面し始めた頃、イタリアの作家は、この時代に生きる人びとにそう問いかけました▼消えた人影、閉じられた学校、静まりかえった街。日常のリズムが止まり、生活の変化を強いられ、空白となった時間。この3年余の間、私たちは計り知れないほどのものを失ってきました。命の重さと向き合いながら▼世界保健機関(WHO)が新型コロナの緊急事態は終わったと宣言しました。日本ではきょうから季節性インフルエンザと同じ「5類」の位置づけに引き下げられます。これまで追われてきた対応が節目をむかえています▼WHOに報告された死者は692万人ですが、テドロス事務局長は実際にはその数倍で、少なくとも2千万人にのぼるとの見方を示しました。後遺症に苦しむ人も多く、引き続きの警戒とともに国民の命と健康を守る政府の姿勢が問われます▼ところが、いまだ大流行の懸念があるのに、岸田政権は検査代や治療費の自己負担を求め、医療機関の経営をさらに圧迫しようとしています。自己責任の押しつけと支援の縮小は、ふたたびの危機を招きかねません▼大切なものを失い、人生さえ変えられるなかで社会の仕組みが問われ続けてきました。「ウイルスが歴史の行方を決めることはない。それを決めるのは人間である」。3年前に著名な歴史学者が発したメッセージは、今も私たちに投げかけられています。


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