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2023年5月8日(月)

主張

フリーランス保護

労働法による権利保障拡大を

 フリーランス取引適正化法が4月28日の参院本会議で全会一致によって可決・成立しました。“権利ゼロ”の働き方に苦しめられているフリーランスの就業環境に一定のルールを設けました。フリーランスの多くは労働者と変わらない働き方をしています。さらに労働法の中に位置づけて権利を保障する必要があります。

適正化法の規制守らせよ

 フリーランスは、仕事を発注する企業と事業の契約を結んで働きます。フリーランスが多い分野はデータ入力作業、デザイン・ウェブサイトの作成、配送、塾講師と多岐にわたります。2020年の内閣官房による調査で462万人と推計されます。

 発注者が仕事を指示して働かせるやり方は、雇用主・労働者の関係と違いがありませんが、個人事業主と扱われます。

 労働者の権利は憲法、労働基準法、労働組合法などに定められています。雇用主は労働時間、均等待遇、最低賃金といった、さまざまな規定を守る義務を負っています。しかしフリーランスは「雇用によらない働き方」とされています。これを理由に、労働法規による規制を逃れていることが無権利の働き方を横行させています。

 フリーランス有志が実態を告発し、日本共産党議員が国会で繰り返し質問したことに押されて政府が対策に動きだしました。

 フリーランス取引適正化法は、契約にあたって書面や電子メールの交付を義務づけ、報酬の支払期日を納品から60日以内としました。一方的な報酬カットを禁じ、契約を中途解除する場合は30日前までに予告すると定めました。ハラスメント防止も盛り込みました。実効ある規制として守らせていく必要があります。

 これらは公正な経済活動を確保するための規定です。労働者としての権利を保障するものではありません。労働法で保護を広げることが不可欠です。

 正確な労働時間の管理、雇用・労災保険の加入、報酬の最低基準の設定、労働組合を結成して団体交渉・ストライキを行う権利がフリーランスにも保障されるべきです。実態が労働者と変わらないのに、いつでも首を切れる安上がりの働き手を確保するためにフリーランスを偽装することは取り締まらなければなりません。

 国際労働機関(ILO)は06年に採択した勧告第198号で、自営業の形を偽装した雇用関係によって労働者の権利が侵されないよう、誰が労働者にあたるのかを、社会の変化に応じて定期的に見直すよう各国政府に求めました。

「労働者性」認める欧州

 欧州ではフリーランスに「労働者性」を認めて労働法で権利を保障する動きが強まっています。

 スペインでは商品の配達員に労働者の地位を認めた法律が21年に制定されました。

 欧州議会では「プラットフォーム労働の労働条件改善に関する指令案」(法案)が審議中です。インターネットで個人事業主に仕事を発注する「プラットフォーム企業」が報酬を決定したり、仕事の進め方を決めたりした場合、労働者と「推定」されるとして、労働法で保護する対象とします。

 フリーランスが安心して働けるよう規制逃れを許さない法制度を日本も作らなければなりません。


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