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2023年5月7日(日)

きょうの潮流

 胸のすくような民主主義の実践記録。テレビ番組から映画になったドキュメンタリー「ハマのドン」(松原文枝監督、公開中)です。2019年から21年までを舞台に保守の重鎮が横浜市民と「カジノ誘致」をはね返した軌跡を追います▼主人公は藤木幸夫さん(92)。港湾の元締めで菅義偉前総理の後ろ盾でもあった裏の権力者です。なぜ反旗を翻したのか。「(博打=ばくち=は)必ずおけら(一文無し)になる。親子別れ、夫婦別れができる」。背景には、博打が唯一の娯楽だった時代の港湾労働者の苦難の歴史がありました▼カジノ反対は「死んだおやじ、港の先輩たちに言わされている」とも。政治学者の中島岳志さんの言葉を借りれば「死者との共闘」です▼藤木さんは戦争の犠牲者とも“共闘”します。横浜空襲で兄のように慕っていた教師が死んだ時、15歳の彼は脳みそを拾い、空き缶に入れて遺族に届けました。いまの時代の空気はモノが言えなかった戦前と似てきた、とも▼映画は藤木さんの言動が海外在住のカジノ関係者まで動かしたことを伝えます。「リスクを背負ってたたかっていたからこそ、人の心を動かした。その連鎖を描きたかった」と松原さん▼監督自身、安倍一強の時代、テレビ朝日「報道ステーション」のチーフプロデューサーとして、圧力に抗して権力を監視してきました。「主権は官邸にあらず、主権在民」(藤木さん)。「健全な民主主義の発達に資する」ことが放送の目的なら、こういう番組がもっと増えていい。


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