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2023年5月6日(土)

主張

入管法改悪案

人権侵害の深刻化許されない

 入管法改悪案は4月28日の衆院法務委員会で自民、公明、日本維新、国民民主の賛成多数で可決されました。連休明けの衆院通過が狙われています。同案は2021年に世論の批判を浴びて廃案になった改悪案とほぼ同じ内容です。世界でも異常に低い難民認定率、原則収容主義などの非人道的な入管・難民行政を改めず、送還を促進し外国人の人権侵害を一層深刻化させるものです。自公・維新・国民の4党提出の修正案は、難民認定に配慮義務などを加えただけで、危険な本質は変わりません。反対の声をさらに広げ、断固廃案にしなければなりません。

修正で危険は変わらず

 衆院審議では、送還の危険性のある当事者、家族、弁護士、支援者の参考人質疑が行われていません。聞くべき人から意見を聞かず採決を強行した4党の姿勢は、法案の問題点を覆い隠すものです。

 日本は難民認定が他の先進諸国と比べ少なすぎます。参考人質疑で難民行政に詳しい学者は「出身国情報の把握に弱さがある」ことを問題視しました。難民認定申請中に送還できる規定を設けることは、生命や自由が脅かされるおそれがある国への追放、送還を禁じた難民条約第33条第1項のノン・ルフールマン原則に反します。

 入管が本人に意見陳述をさせず難民不認定にしたウガンダの同性愛の女性を、裁判所が難民と認めたケースがあります。3回目の申請で難民認定された人もいます。

 法相、難民審査参与員の難民認定の判断が間違うことがあるのに検証も反省もしない入管の態度は不信感を抱かせます。管理・監視と難民保護を分離するためにも法律の本則に難民認定の専門性のある第三者機関を設置することを明記すべきです。年限も限らず設置を検討すると付則で規定するだけでは担保にはなりません。

 監理措置は支援する立場の人を監視役にする非人道的制度です。支援者、弁護士などの9割が監理人になれない、なりたくないと答えています。監理措置にされない限り、収容が優先する原則収容主義が維持されています。子どもの収容禁止規定や、収容に当たっての司法審査もありません。収容期間に上限もなく、国際人権基準の観点から批判されています。

 名古屋入管で死亡したスリランカ人・ウィシュマさんをめぐる入管の報告書が真実を隠していることは大問題です。全ての映像記録と資料の提出をはじめ、真相究明は、法案審議の大前提です。

 子どもを仮放免や在留資格がないまま放置し送還すること、医療を受けさせないことなどは、子どもの権利条約違反です。在留特別許可申請手続きでは、定着性、家族統合、子どもの最善の利益などについて考慮が尽くされる保証がありません。人道的立場から、子どもと家族に今すぐ在留特別許可を出し、日本で安心して住み続けられるようにするべきです。

必ず廃案に追い込もう

 21年に次いで今回の改悪案にも、国連人権理事会特別報告者などから国際人権法に反するとの厳しい意見がありました。ところが、斎藤健法相は真摯(しんし)に受け止めないばかりか、指摘に抗議し、人権後進国の姿を再びあらわにしました。

 改悪案は廃案にし、国際人権基準に沿った人権尊重の制度に徹底的に見直すことこそ必要です。


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