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2023年5月6日(土)

軍拡財源・軍需産業支援法案

政府、今国会成立狙う

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(写真)3日の憲法大集会で平和憲法を守ろうとアピールする憲法集会参加者たちと、戦争国家づくりに反対して国会論戦を広げる日本共産党議員(左から赤嶺政賢、田村貴昭、宮本徹の各衆院議員と山添拓参院議員)

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 軍拡財源法案、軍需産業支援法案の今国会での成立が狙われています。両法案は、岸田文雄政権の安保3文書に基づく「戦争国家づくり」を具体化するものです。さらに政府は、非軍事分野に限る政府開発援助(ODA)の対象外であった他国軍への武器供与などを可能にする方針を決定。殺傷力のある武器の輸出まで可能にしようと、与党で議論を始めています。これらの動きは、侵略戦争の教訓を踏まえた、戦後日本の「平和国家」としてのあり方や日本国憲法を覆す歴史的な暴挙です。

 岸田政権が閣議決定した安保3文書では、違憲の敵基地攻撃能力の保有や、軍事費を5年間で43兆円に増額すると明記しました。

 その大軍拡予算を捻出するのが軍拡財源法案です。「防衛力強化資金」を創設し、地域医療やコロナ対策を担っている国立病院機構と地域医療機能推進機構(JCHO)の積立金や、東日本大震災の復興財源である復興特別所得税の半分などを軍事費に流用します。社会保障費の削減や大増税につながる危険な道です。

 一方、安保3文書で盛り込まれた軍需産業の基盤強化や武器輸出の「官民一体で推進」を具体化するのが軍需産業支援法案です。同法案は、国が採算のとれない軍事企業の製造施設を買い取り、設備投資や維持管理を負担せずに経営できるようにする「究極の軍需産業支援」です。さらに下請け企業も含め約1万5千人に守秘義務を課し、漏洩(ろうえい)だけでなく企てや教唆も刑事罰の対象にします。

 また、政府は「同志国」軍に武器供与などを行う枠組み「政府安全保障能力強化支援(OSA)」の実施方針を決定。武器輸出の拡大に向けて、与党は実務者協議を開き、「防衛装備移転三原則」の運用指針を見直し、殺傷性のある武器輸出解禁を狙っています。こうした武器製造・支援・輸出の仕組みづくりは、国家安保戦略で位置づけられた、事実上の中国包囲網である「自由で開かれたインド太平洋」構築の一環です。

自公政権を維新・国民あおる

共産党は正面対決

 こうした中、維新や国民は自公政権の「補完勢力」として大軍拡をあおっています。日本維新の会の三木圭恵議員は、4月4日の衆院本会議で、安保3文書について「踏み込みが足りない」と述べ、大軍拡や改憲を要求。非核三原則の堅持は「思考停止だ」として、米国の核兵器を日米で共同管理する「核共有」や、原子力潜水艦の日米共同運用などの議論開始をけしかけました。

社会保障削減も

 国民民主党の榛葉賀津也議員も同26日の参院本会議で、敵基地攻撃能力の保有支持を改めて表明し、軍事利用を前提とした港、空港、鉄道の整備を求めました。特に沖縄などの南西諸島の軍事基地化をあおっています。港湾で周辺の水深が浅く自衛隊の艦艇が接岸できないのは「ありえない」と言及。下地島空港が、政府と琉球政府との屋良覚書(1971年)で軍事利用できないことを批判し、沖縄県と屋良覚書について「話し合う時期だ」と政府にけしかけました。

 軍拡財源法案についても、維新は「防衛増税に反対」とポーズをとりながらも、財源として国民負担増を否定していません。井上英孝議員は4月6日の衆院本会議で、「増え続ける社会保障関係費の抜本的な見直しをなぜしないのか」と社会保障の削減に言及。大企業利益を優先する「岩盤規制をはじめとする規制緩和」を求めました。

 立憲民主党も「一定程度の防衛費増額は必要」との立場をとり、軍需産業支援法案には賛成しました。自民、公明、維新、国民とともに「防衛産業の国際競争力強化のための基本方針の策定」「多様な企業が参入しやすい環境の整備」など、軍需産業や武器輸出のさらなる支援策を盛り込んだ付帯決議案を提案。4月27日の衆院安全保障委員会では、立民の伊藤俊輔議員が付帯決議案を読み上げました。

米下請けと批判

 こうした憲法9条を踏みにじる大軍拡の動きに対し、正面から批判する論陣を張っているのが日本共産党です。

 軍拡財源法案について田村貴昭議員は4月18日の衆院財務金融委員会で、積立金返納の対象となっている国立病院機構などでは、経営赤字で建物の改修ができず、必要な人員や医療機器も確保できていない実態を示し、「患者の命より軍拡優先か」と迫りました。

 また、防衛力強化資金は国会で審議せずに、特別会計の繰入金などをためこめるとして、第2次世界大戦中に、戦争終結まで一度も決算せずに軍事費膨張の原因となった臨時軍事費特別会計と同じだと指摘しました。

 同法案によって導入を狙う敵基地攻撃能力の問題も追及しています。宮本徹議員は同19日の衆院財務金融・安全保障両委員会の連合審査で、敵基地攻撃を行う際、攻撃目標を特定する情報を持つ米側が目標を決定し、自衛隊が敵基地攻撃を行うことになるとして、「日本は米国の下請けにならざるを得ない」と批判しました。

 軍需産業支援法案についても、日本共産党が正面から批判しています。赤嶺政賢議員は4月27日の衆院安保委員会で、国が軍事企業を丸抱えにし、武器輸出の助成も進めるもので、「戦争を企業のもうけに利用するなど許されない」と訴えました。

 OSAの問題では、山添拓議員が4月13日の参院外交防衛委員会で、従来のODAでも、ミャンマーに提供した旅客船が軍事転用された事例を紹介し、OSAも目的外利用され、紛争を助長する恐れがあると批判。OSAで「平和国家」のイメージが崩れ、非政府組織(NGO)の活動に影響を及ぼすとの懸念が広がっているとして、撤回を要求しました。

 軍需産業支援法案は、5月9日の衆院本会議で採決が予定されています。軍拡財源法案をめぐっては、自民党が同9日の衆院財務金融委員会での採決を提案。与党は早期の衆院通過を狙っており、緊迫した状況です。これらの法案による大軍拡は、「専守防衛」の大原則を投げ捨て、憲法9条に反するのは明らかです。拙速な国会審議で成立させるなど許されません。(斎藤和紀)


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