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2023年5月1日(月)

きょうの潮流

 「あなたの人生の大事な瞬間には、いつも子どもがいましたね」と聞くと、「ザッツライト(その通り)」と繰り返したアレン・ネルソンさん(故人)。何年か前の取材でのことです▼ベトナム戦争に従軍した元米海兵隊員。銃撃戦から逃げた防空壕(ごう)で、ベトナム人の出産に偶然立ち会うことに。帰国後、学校の教室で女の子から「人を殺しましたか」と問われ、苦しみながら「イエス」と。号泣するネルソンさんを子どもたちはハグしてくれました▼子どもとのふれあいを通じて人間として回復していきます。それでも、戦場の悪夢は見続けました。死体の山で母を見つけ、しがみついて泣き叫ぶ子…▼「2人目はつくらないの?」と記者に逆質問も。「欲しいのなら、諦めない方がいい。子どもとの出会いはすべて宝物だから」。その言葉に背中を押され、1年後に出産しました。縁とは不思議なもの。ネルソンさんに会わなければ、次女はこの世にいなかったのですから▼出生数が80万人を下回った日本。働く人と女性に冷たい政治の結果です。「異次元の少子化対策」を掲げる岸田内閣が、その一方で進めるのは大軍拡と戦争準備。軍国主義時代の「産めよ殖(ふ)やせよ」を彷彿(ほうふつ)とさせるのは不幸です▼ベトナム帰還兵たちが最も苦しんだのは子どもを殺してしまった記憶でした。「僕のように、非暴力の生き方を求める人間にとって、憲法9条は生きるための基盤なんだ」。アメリカの戦争加害を語り続けたネルソンさんの言葉をかみしめたい。


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