2023年4月28日(金)
無保険 必要な医療受けられず
入管法の改悪やめて
「仮放免」の外国人訴え
難民として認められず入管の収容施設から「仮放免」となった外国人が、健康保険証を持てず必要な医療を受けられていない問題があります。現在、国会で審議中の入管法改悪案はこの問題点を改善しないだけでなく、外国人の人権侵害を一層深刻化させるものです。当事者・支援者から廃案を求める声が上がっています。(小酒井自由)
中東出身のメフメットさん(50代)=仮名=は、信仰をめぐる問題が自身の生き方に合わず、約20年前に国を飛び出しました。2016年から4年間入管に収容されました。20年に収容を一時的に解かれる「仮放免」になりました。
10割自己負担
健康保険証を持つことができないため、医療費は10割自己負担になります。肩や腰、胃の痛みがひどく、痛み止めを処方してもらうために、支援団体の立て替えや低所得者支援として実施される無料低額診療(無低診)を利用しています。1回の受診で数万円もの高額な医療費を支援団体や医療機関に負担してもらうことへのためらいがあり、できるだけ受診を控えています。
一度風邪を引くと、のどの痛みが長引くといいます。市販薬でしのごうとしますが、症状が改善しないことも。そのたびに「手遅れになる病気かもしれない」と不安に襲われます。医師からは「へんとう腺の手術が必要だ」と言われています。しかし、「手術代をインターネットで調べると20万円かかると分かってあきらめました。医療費が高額で相談ができない」と肩を落とします。
高額の医療費に苦しめられる外国人は他にもいます。あるクルド人の大学生は、自身含め家族全員が保険証を持っていません。「父は持病があるのに、高い医療費が払えず放置した結果、脳に支障をきたすところまで悪化した」
全日本民主医療機関連合会の調査では、22年の1年間に医療費の支払いが困難な外国人は139人いました。その内、少なくとも100人が「仮放免」の状態でした。
支援「限界」も
医療費支援に「限界」の声も上がります。無低診は、患者を受け入れた医療費の患者負担分を医療機関が全額または大部分を負担する制度です。治療期間が長引けば、医療機関側の負担は膨らみ続けます。
全日本民医連の事業所の中には1人の患者が6年近くの通院を必要とし、570万円もの負担をしたところがあるといいます。久保田直生常駐理事は、「在留資格のない人が難民認定されれば日本の社会保険制度を利用できる。公的支援が必要不可欠だ」と指摘します。
同改悪案はこの問題を解消するものになっていないだけでなく、難民申請中の外国人の強制送還を可能にするものです。久保田さんは、支援している外国人の中に、政治や宗教上の理由で帰国すれば命の危険にさらされる人もいると指摘。「命を守る立場として改悪案を許せない」と廃案を求めました。
メフメットさんは、2回目の難民申請中です。自国の反政府活動をしているため帰国すれば命に危険が及ぶといいます。「改悪案は廃案にしてほしい。人権が守られる日本社会であってほしいし、国籍が違うだけで人間扱いされない入管問題を多くの人に知ってもらいたい」と語りました。








