2023年4月26日(水)
きょうの潮流
「天文学の父」とも呼ばれるガリレオは地動説を主張したことを理由にカトリック教会から弾圧され、異端審問で有罪とされました。ローマ教皇が裁判の誤りを認め、謝罪したのは彼の死後350年たってからでした▼権力者が学問の自由を踏みにじる例は古今東西、枚挙にいとまがありません。日本では90年前の滝川事件が有名です。京都帝国大学の滝川幸辰(ゆきとき)教授の学説が「赤化思想」とされ、教授は文部省から休職処分を受け退官。著書は発禁になりました▼戦前の日本には学問の自由がありませんでした。実証的な歴史学は学校では教えられず、皇国史観に基づく歴史が真実とされ、国民を侵略戦争に駆り立てました▼その残滓(ざんし)は、今の政権にも受け継がれています。政府は一片の閣議決定で教科書から「従軍慰安婦」の「従軍」を削除させ、「強制連行」の言葉を変えさせました。多くの人たちの粘り強い研究で明らかになった日本の犯罪行為という事実を、政治の力で隠そうとしているのです▼軍事研究に否定的な日本学術会議を、政権の意にそったものに変える法改悪も狙いました。批判が噴出し、学術会議は総会で法案提出をやめるように求める勧告を議決。改悪案の今国会提出は見送られることになりました▼学術会議の変質を狙う動きはまだ続いています。学問を権力者に従わせる道はどこにつながるのか。第2次大戦中にドイツでも、アメリカでも、そして日本でも、核兵器開発に科学者が動員された歴史を忘れてはなりません。








