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2023年4月21日(金)

主張

ジャニーズ事務所

性加害の疑惑に口をつぐむな

 大手芸能プロダクション・ジャニーズ事務所の創業者・ジャニー喜多川前社長(2019年死去)が、事務所に所属した10代の少年たちに性加害を常習的・継続的に行っていたとの証言が、元メンバーから相次いでいます。

少年たちの夢につけこむ

 元メンバーの26歳男性は12日に記者会見し、15歳の時にジャニー氏の自宅で口腔性交されたと証言しました。男性が事務所に所属していた12~16年の間、同様の行為を15~20回されたと言います。男性は、自分と同時期にジャニー氏の自宅に泊まった少年は少なくとも100~200人にのぼり、そのほぼ全員が被害を受けていたと思うと述べました。

 イギリスの公共放送BBCのドキュメンタリー番組(3月7日放送)や、『週刊文春』(3月23日号など)に元メンバーが次々登場し、同趣旨の証言をしています。少年たちの間では「これを我慢しないと売れないから」と話されていたとされます。

 芸能界で絶大な権力を持つ人物が、デビューを目指す少年の夢につけこみ、相当数の未成年者に性行為を強要し続けていた深刻な疑惑です。ジャニー氏はすでに故人ですが、その名を冠した企業が、重大な疑惑に口をつぐんだまま営業を続けることは許されません。

 これだけの被害が長年にわたって生み出されながら、なぜ大きな問題になってこなかったのか。

 BBC番組では、元メンバーが今でも少年時代の被害を被害と認識できず、「自分の人生を変えてくれた」「今でも大好き」などとジャニー氏への感謝や愛情を口にする様子が描き出されています。BBCは、彼らの言動は「グルーミング」によるものだと指摘しています。グルーミングとは、おとなが性的行為を行う目的をもって子どもを懐柔し、自分たちには特別な絆があると思い込ませ、被害を被害と思わず、声を上げづらくさせる性加害の手口を指します。

 グルーミングを行うおとなは「すごく優しい」「共感してくれる」などの印象を子どもに与えます。一度手なづけられると、あとでひどいことをされても、相手を全否定できません。

 お気に入りのメンバーを自宅に泊まらせ、スターへと導く恩義を感じさせながら性行為を受け入れさせる。これは典型的なグルーミングです。近年、SNSなどを通して子どもを言葉巧みにだまして信用させ、性犯罪に及ぶケースが増えていることから、国会に提出された刑法改正案にはグルーミングに関する罪の新設が盛り込まれています。ジャニーズ事務所の事例からも、グルーミングの特徴と危険性について議論と認識を深めることが求められます。

社会のあり方も問われる

 ジャニー氏の性的虐待疑惑は、1999年に『週刊文春』が報道しました。ジャニーズ事務所側が同誌を名誉毀損(きそん)で訴えた裁判ではジャニー氏のセクハラ行為が事実認定されました。同事務所とのしがらみから、疑惑を大きく報じてこなかったメディアと、噂(うわさ)をうすうす知りながらも「芸能界ではよくあること」などと見て見ぬふりをしてきた日本社会のあり方も、厳しく問われます。

 被害が「なかったこと」とされ、被害者が声を上げられない―そんな社会を変えることが必要です。


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