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2023年4月20日(木)

主張

入管法改悪案

人権侵害に無反省 強行許すな

 岸田文雄政権が衆院法務委員会で審議入りしたばかりの入管法改悪案の採決を急ぐ動きを強めています。同案は2021年に世論の批判を浴びて廃案になった改悪案とほぼ同じです。世界でも異常に低い難民認定率、全件収容主義などの非人道的な入管・難民行政を改めないどころか、外国人の人権侵害を一層深刻化させるものです。審議の前提である入管施設収容中に死去したスリランカ人女性の事件の全容解明もこれからです。事件の真相を明らかにしないまま、野党と国民の反対を押し切って審議を終局し、採決を強行することは許されません。

事件の解明は審議の前提

 名古屋入管で録画されたスリランカ人・ウィシュマ・サンダマリさんの死亡直前の映像記録の一部を遺族・弁護団が4日の記者会見で公開しました。ベッドに横たわったまま「何もできない」と何度も悲痛な声を上げるウィシュマさんの姿が映し出されました。

 妹のワヨミさんは「姉がどんなに救いのない環境で見殺しにされたか、日本の皆さんに知ってほしい」と語り、別の妹のポールニマさんは二度と同じことが起きないよう「制度を変えるため、力を貸してください」と訴えました。

 映像について斎藤健法相は7日、「原告側が勝手に編集し、マスコミに提供して公開させた」と発言しました。遺族がウィシュマさんの死を巡る真相を、メディアを通じ国民に知らせる行為を問題視するのは悪質です。遺族の気持ちを踏みにじるばかりか、言論にも圧力をかける、許し難い発言です。

 入管庁が21年にまとめた事件の最終報告書には映像と異なる記述があります。同庁は究明につながる資料を出しません。報告書作成に際し意見を聞いた有識者には録画した295時間分の全映像が提供されました。全ての映像が国会に提出されなくてはなりません。

 改悪案は、ウィシュマさん事件の反省に立っていません。入管庁は被収容者の生命・身体の安全や健康に向き合うどころか、詐病扱いしています。人権と尊厳を踏みにじる姿勢を改めるべきです。

 改悪案では、難民認定申請中は送還が停止される規定(送還停止効)に例外を設け、3回目以降は申請中の送還を可能にします。迫害を受ける恐れがある国への追放・送還を禁じた難民条約第33条第1項に反します。

 在留資格のない外国人全てを収容・送還する「全件収容主義」の考えは変えません。収容か「監理措置制度」かの選択にすると説明しますが、判断するのは、裁判所でなく入管庁です。入管庁の広範な裁量は温存されます。

 3カ月ごとに収容の要否を見直すとしているものの、期間の上限規定はなく、無期限長期収容の非人間的な扱いの危険はなくなりません。監理措置制度は、親族や支援者を監理人に選定し、罰則付きで監視する役目を負わせます。事実上、“入管庁の手先”です。外国人保護とは相いれません。

力を合わせて再び廃案に

 外国人の人権保障の観点に立ち、入管行政自体を抜本的に改めなければなりません。国際的な人権水準にかなう入管・難民行政を求める運動をさらに広げる時です。力を合わせ、外国人の命と生活を危うくする改悪案を断固廃案に追い込みましょう。


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