2023年4月16日(日)
主張
大阪カジノ認定
破綻明白な計画 ストップせよ
カジノを中核とする統合型リゾート(IR)で、大阪府・市が国に申請していたカジノ事業の計画(区域整備計画)が、岸田文雄首相を本部長とするIR推進本部の承認を経て14日、正式に認定されました。
岸田首相は、大阪のIRについて「日本の魅力を世界に発信する観光拠点となることが期待されている」とのべました。カジノを解禁した安倍晋三元首相の推進路線を無反省に引き継ぎ、実行に移すことは許されません。
成り立たないビジネス
コロナ禍を経て、世界のカジノ事情は激変しています。地上型のカジノ施設にたくさんの客を詰め込み、24時間365日、ひたすらギャンブル漬けにするというビジネスは成り立たなくなってきています。
カジノ業界は巨額の資金がかかっても、もうからない地上型カジノから、インターネット上で仮想的なカジノを開帳するオンラインカジノやスポーツ賭博に主力を移しています。
日本でいまつくろうとしているIRは、地上型カジノをつくり、その高い収益力を生かして、国際会議場、展示場、ホテル、エンターテインメント施設などを併設する巨大な観光拠点を形成するという構想です。すでに時代遅れとなっていることは明らかです。
安倍政権がカジノを解禁したときの旗印は「国際観光産業振興」でした。IRをつくれば世界中から観光客が集まって大きな経済効果が生まれるというのです。
しかし、日本にIRができたとして、世界からカジノをやりにくる客がどれだけいるのでしょうか。カジノ解禁当時には、中国の富裕層が押し寄せるという議論がされましたが、中国国内のギャンブル規制の強化などで、そんな話は夢のまた夢になっています。
海外からの観光客は日本の食や自然や多様な魅力にひかれて日本を訪れており、IRが「日本の魅力を世界に発信する」などというのは幻想です。大阪カジノの計画自身が、IRの客の7割は日本人が占めるとしています。
大阪カジノ計画は国の基準に適合するために、誘客数やカジノ売り上げに過大な数字をかかげています。「空想的」ともいえる計画を認定した国の姿勢、見識が厳しく問われています。
大阪カジノの予定地である夢洲(ゆめしま)をめぐっては、埋め立て地の特性から地盤沈下や土壌汚染、液状化などの問題があり、その対策費として大阪市が790億円もの公費をつぎ込みます。IR用地の格安賃料・不当鑑定疑惑では住民訴訟も提起されています。根強いカジノ反対の声を無視して、このまま計画をすすめることに道理はありません。
反対世論をさらに広げ
国の認定は当初、昨年10月ごろになると見込まれていましたが、審査は長引きました。カジノ推進に熱中する日本維新の会などから早期の認定を迫る国会質問や発言が相次いだことも重大です。
カジノは人の不幸の上に成り立つビジネスです。カジノはもうかるという前提条件が崩れたいま、IRに国や地域の未来を委ねる愚策はやめなければなりません。
「日本のどこにもカジノはいらない」―この声を広げ、カジノ計画にストップをかけましょう。