2023年4月16日(日)
きょうの潮流
またか。一報を知ったとき、あの凶行が頭をよぎりました。岸田首相の演説会場で筒状の物体が投げ込まれ、爆発音とともに白い煙があがりました▼現場は和歌山市の雑賀崎(さいかざき)漁港。支援者らと交流し、試食を終えた首相が演説にのぞむ直前に起きました。あたりは騒然となり悲鳴や怒号がとびかい、物体を投げ込んだとみられる24歳の男性がその場で取り押さえられました▼昨年7月、参院選のさなかに銃撃された安倍元首相。その惨劇はいまだ記憶に生々しく残っています。同じく選挙期間中で遊説先に多くの聴衆が集まったなかでの蛮行。それがくり返されたことに、衝撃とともに空恐ろしさを感じます▼物体は首相の至近に落ちたといいます。犯行の動機や狙いはわかりませんが、選挙の場が利用され、首相の身が危険にさらされたことは事実です。こうした卑劣な妨害行為が社会にあたえる影響ははかりしれません▼選挙は私たち国民が政治に参加し、主権者としての意思を政治に反映させることのできる最も重要な機会です。実際に行われている政治にたいして審判を下し、変える好機にも。それを奪うような暴力行為が続いたことに、この国の行く末が案じられます▼こうした直接的な暴力をふくめ、演説の妨げや候補者への嫌がらせ、ポスター破りなど、選挙運動を妨害する行為は後を絶ちません。謀略ビラもその一つです。どれだけ自由な言論や民主主義を危うくしているか。暴力では何も解決せず、憎しみが連鎖していくだけです。








