2023年4月14日(金)
主張
軍需産業支援法案
異常な至れり尽くせり許すな
防衛省・自衛隊が調達する兵器などの開発・生産基盤を強化するため、政府が国内の軍需産業を財政的に支援する法案が衆院で審議入りしています。岸田文雄政権が昨年末に閣議決定した安保3文書に基づき、今後5年間で43兆円もの大軍拡を推し進めるための重大な法案の一つです。
政府が利益拡大を保証
安保3文書は、敵基地攻撃能力の保有など「防衛力の抜本的強化」を打ち出すとともに、軍需産業は「いわば防衛力そのものと位置付けられるものであることから、その強化は必要不可欠」と強調しました。その上で「力強く持続可能な防衛産業を構築する」として、「事業の魅力化を含む各種取り組みを政府横断的に進める」としています。軍需産業の利益拡大を保証するため、政府を挙げて支援に乗り出すという表明です。
3文書はまた、「官民一体となって防衛装備移転を進める」ことも明記し、「武器輸出」の対象拡大や企業支援の拡充に取り組もうとしています。
こうした3文書の方針を受け、今回の法案は、(1)兵器製造の基盤強化(2)「武器輸出」の円滑化(3)製造施設の国有化―のための措置などを盛り込んでいます。
兵器製造の基盤強化では、自衛隊の任務遂行に不可欠な兵器を製造する企業が、▽原材料や部品などの供給網(サプライチェーン)の強靱(きょうじん)化▽製造工程効率化のための設備導入▽サイバーセキュリティーの強化―などを実施する場合、政府がこれらの経費を直接負担することを定めています。3月に成立した23年度の予算に363億円が計上されています。
「武器輸出」の円滑化に関しては、基金を創設し、政府の求めに応じて輸出する兵器の仕様や性能を変更する場合に、その費用を助成する仕組みをつくります。23年度予算では400億円が充てられています。
安保3文書は、「防衛装備移転三原則や運用指針をはじめとする制度の見直しについて検討する」と明記し、与党は近く改定の議論を開始するとされています。自民党は、現状では原則禁止されている殺傷力のある兵器の輸出を解禁しようとしていると報じられています。
製造施設の国有化では、事業の継続が困難になった企業の製造施設を政府が保有し、他の企業などに管理・運営させることを可能にします。戦前・戦中の工廠(こうしょう=国営軍需工場)の復活につながるとの批判も上がっています。
さらに、兵器の製造や自衛隊施設の整備などで防衛省と契約する企業の従業員に秘密保全の義務を課し、漏洩(ろうえい)した場合は1年以下の拘禁刑(懲役)または50万円以下の罰金を科す規定も新設します。
軍事国家づくりの一環
防衛省・自衛隊の兵器調達は主に、国内の軍事企業からと米国の対外有償軍事援助(FMS)によります。23年度予算のFMS契約は1兆4768億円で、前年度から1兆971億円もの増額となっています。
今回の法案は、米国の巨大軍事企業のもうけを保証した上に、財界の求めに応えて国内の軍需産業を手厚く保護し強化しようとするものです。憲法9条に反する軍事国家づくりの一環であり、徹底審議し廃案にすべきです。








