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2023年4月13日(木)

主張

障害者「65歳問題」

介護保険への移行強制やめよ

 65歳になった障害者が、それまで利用していた障害福祉サービスから介護保険サービスへの変更を自治体から迫られることが問題になっています。介護保険になると利用できるサービスが減ったり、自己負担を求められたりします。収入が限られている障害者にとって死活問題です。憲法が保障する生存権の侵害だとして処分取り消しを求める訴訟を起こす障害者もいます。岸田文雄政権は訴えを受け止め、介護保険への移行を強いる施策をやめるべきです。

日常生活に大きな支障

 介護保険を申請しなかったことを理由に千葉市が障害福祉サービス受給の申請を却下したのは違憲・違法だとして、障害のある天海(あまがい)正克さん(73)が同市を訴えた裁判の控訴審で東京高裁は、処分を違法として決定取り消しの判決を出しました(3月24日)。市側は判決を不服として7日、上告しました。誤りを認めない市の姿勢は重大です。

 障害者にとっては、障害福祉サービスから介護保険サービスに変更されると、従来と同様の生活を送ることが難しくなります。制度の目的が異なるからです。

 障害福祉サービスの目的は、個人として尊重されるよう障害者の社会参加を含めた日常生活全般を保障することです。一方、介護保険サービスは要介護状態の高齢者の日常生活に限定して支援をするというものです。

 住民税非課税世帯の障害者の場合、障害福祉サービスは無料ですが、介護保険だと月1万5千円の利用料負担が発生します。天海さんの提訴後の2018年、負担に関する新制度が創設され、条件付きで一部の人に数カ月後に払い戻される仕組みになりました。しかし、一時的に利用料負担が生じるため、低所得者の暮らしを圧迫することに変わりありません。

 多くの65歳以上の障害者は介護保険への切り替えに苦しめられています。厚生労働省は障害者総合支援法7条を根拠に介護保険優先原則の立場をとりつつ、自治体には、一律に介護保険サービスを優先させるのではなく個々の状況に応じた支給決定を求めています。

 岡山市の障害のある男性は13年、天海さんと同様の訴訟を起こしました。一審、二審とも勝訴し、二審判決は確定しました。同判決は自治体に裁量権があるとし、障害福祉と介護保険の理念・内容・利用料などの違いを踏まえた上で、市の対応を違法としました。総合支援法7条は、違う制度からのサービスの二重給付を避けるための規定であり、男性は介護給付を申請していないので二重給付にはならないとも指摘しました。障害者の暮らしの実態を踏まえた重要な判断です。

平等の暮らし実現に向け

 国連・障害者権利委員会は昨年、日本政府の障害者施策について審査しました。そこでは障害者を人権の主体としてとらえず、平等な市民として尊重しないまま法制定をしていると批判が出されました。その上で、地域社会で障害者が必要とするサービス・支援を提供するにあたり、自治体間格差をなくすために必要な立法・予算措置を講じるよう勧告しました。

 岸田政権は勧告を真摯(しんし)に受け止め、障害のない人と平等の暮らしを障害者に実現するために、踏み出すことが求められます。


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