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2023年4月12日(水)

きょうの潮流

 あらゆる文章には、文体がある。それはどこから出てくるかというと、どういうときに書いているか、どういう気持ちで書いているか、そして、どういう読み手に向けて書いているか、その3点から表れてくる―▼亡くなった大江健三郎さんがそう話していたことがあります。時には書かれている内容よりもっとはっきりと、どういう人間が書いているかということを表現してしまうのが文体だと。戦後の憲法や教育基本法に記された「希求する」という言葉を例にしながら▼いま人間のように文章をつくり、対話もできる人工知能(AI)の「チャットGPT」が話題になっています。米国の企業が昨秋に公開すると、世界中で利用者が急増。一方で使い方や安全性を危ぐする訴えも相次いでいます▼膨大なデータの収集が個人情報保護に反する疑いがあるとして、イタリアでは使用を一時禁止に。欧州では規制を強める動きも現れています▼リポートなどが簡単に作成できることから、日本でも教育現場から懸念の声があがっています。名古屋大の学長はAIでつくった文章を卒業式で紹介しながら、「もっともらしいけど空虚」とのべ、「人は人にしかできないことに挑んでいくことが求められる」と呼びかけました▼進化を続けるAIの領域は、人間社会のなかにどんどん浸透しています。それと、どうやって共存していくか。倫理や規範もなく欲望や権力のために利用されれば人類の脅威にも。問われているのはわれわれ人間のあり方です。


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