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2023年4月11日(火)

きょうの潮流

 その日は朝から大雨だったといいます。忙しく立ち回りながら、口々に言っていたそうです。これはみんなの涙だね。うれし涙か、かなし涙か、どっちかねって▼沖縄の糸満市に「ひめゆり平和祈念資料館」が開館した日のことを設立者たちが語り合いました。最初は沖縄戦を体験した同窓生が多く集まり、つらい記憶を思い出す場に。展示の説明係も涙声になったり、言葉に詰まったり▼それから34年、いまでは入館者が2300万人をこえる平和の一大発信地に。訃報が伝えられた本村つるさんは設立の準備段階からかかわり、館長も務めました。生き残った者の使命だとして▼当時、師範学校女子部を卒業する寸前に動員され、泥まみれの戦場を逃げ惑いました。至近弾でけがを負った後輩を残してきた悔恨。それを設立の原動力として、同じような痛みを抱える仲間と支えあいました。「戦争は絶対にしてはいけない」という信念をもち続けて▼いま、宮古島沖で消息不明となった自衛隊ヘリについて「中国軍が撃墜した」「外国の攻撃」などとの言説がSNS上でひろがっています。根拠もなく緊張や対立をあおる風潮は、戦争を招く危険な道へと導きかねません▼戦争を知らない世代に、いのちの大切さを伝え継ぎたい。本村さんは、資料館の展示を時代の変化にあわせ、語り部の育成にも力を入れてきました。「戦争は過去の歴史ではない。身近な問題としてとらえてほしい」。平和への変わらぬバトンが、受け継がれることを願って。


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