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2023年4月4日(火)

日本の公的資金を投入 石炭火発計画 疑問の声

インドネシア 西ジャワ州

「脱炭素」名目で閉鎖も、さらに大きな2号機稼働

 日本の国際協力銀行が融資し、大手総合商社丸紅が大株主のチレボン石炭火力発電所1号機(事業者、チレボン電力)=インドネシア西ジャワ州=が「脱炭素」の名目で早期に閉鎖する計画があります。1号機の閉鎖には日本の公的資金が投入されます。他方で、閉鎖する発電所の隣で石炭火力発電2号機の運転開始が控えており、1号機以上の二酸化炭素(CO2)を排出する見込みです。新たな2号機を運転することに市民社会から疑問の声が上がっています。(小梶花恵)


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(写真)チレボン石炭火力発電所1号機(チレボン電力のホームページより)

 チレボン1号機(容量66万キロワット)の早期閉鎖計画が明らかになったのは、昨年11月。インドネシアでのG20(金融・世界経済に関する首脳会合)開会前日、アジア開発銀行(アジア銀)とチレボン電力、インドネシア国有電力公社、インドネシア投資公社が閉鎖の覚書に署名しました。財務省によるとアジア銀は設立以来、日本が最大の出資国。総裁は財務省出身の浅川雅嗣氏です。

 早期閉鎖による会社の損失は実質、アジア銀が創設した資金援助枠組み「エネルギー移行メカニズム」(移行枠組み)の資金で補てん。日本政府は移行枠組みに2500万ドル(33億円)を提供しています。

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社長は丸紅から

 チレボン電力の報告によると、発電容量66万キロワットの1号機は、21年のCO2排出量が480万トンでした。発電容量100万キロワットの2号機が運転を始めれば年間600万トンを排出します。

 1号機、2号機ともに日本政府が全株式を保有する国際協力銀行が建設資金を融資。1号機のチレボン電力と2号機運営会社はいずれも丸紅が大株主で、いずれの社長も丸紅から出向する竹内久博氏です。

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 公正な融資を求める団体「フェアファイナンスガイドジャパン」は、この枠組みを利用することで、今後2号機が座礁資産(価値が大きく下がった資産)になっても公的資金をあてにし、企業が経営責任を取らないのではないかと指摘します。

 丸紅は公的資金の援助で1号機を閉鎖し、2号機を新たに稼働する理由について、「2号機を含めて脱炭素施策の検討を継続的に進めている」と回答。アジア銀は「1号機と2号機は別のプロジェクトであり、2号機への投資は1号機閉鎖のかなり前に決定された」と述べています。

住民の生業打撃

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(写真)インドネシア環境フォーラムのドゥウィ・サウンさん

 1号機が12年に運転を始めて以来、温排水で漁獲量が減少したり、塩田の塩に粉じんが混じるなど、同発電所は周辺住民の生業(なりわい)に打撃を与えています。

 FoEジャパンの波多江秀枝さんによると、住民は十分な補償を受けておらず、全く補償されていない人もいるといいます。

 NGOインドネシア環境フォーラムのドゥウィ・サウンさんは「移行枠組みは発電所が及ぼした影響の回復をせず、住民に対して公正ではない。1号機の閉鎖は良いことだが、もっと大きい2号機を運転するのでは本末転倒ではないか」と指摘しています。


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