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2023年3月31日(金)

主張

生活保護訴訟判決

原告5連勝 国の違法性は明白

 2013年に安倍晋三政権が決定した生活保護費の基準引き下げを違法とし、減額処分取り消しを命じる判決が連続しています。24日の青森と和歌山の2地裁に続き、29日にさいたま地裁で国側は敗訴しました。29都道府県で約1000人の生活保護利用者が基準引き下げの違憲性と違法性を問う訴訟を起こしています。判決が出た17地裁のうち国の違法性が断罪されたのは8地裁ですが、昨年10月の横浜地裁判決からは原告の5連勝です。国の基準引き下げの道理のなさは明白です。岸田文雄政権は控訴せず、基準引き上げを速やかに決断すべきです。

正当化できぬ削減ありき

 安倍政権は13~15年、生活保護費のうち食費や光熱費などにあてる生活扶助費の基準を段階的に引き下げました。削減幅は平均6・5%、世帯構成や地域によっては最大10%にのぼり、削減総額は約670億円と過去に例のない規模でした。影響を受けたのは利用世帯の96%に及びました。

 厚生労働省が引き下げの大きな理由にしているのは、08年以降の物価下落です。利用世帯の可処分所得が相対的に増加したため「デフレ調整」のために基準を下げたなどと主張しました。

 24日の青森地裁は▽デフレ調整は厚労省の審議会など専門機関の検証を経ていない▽世界的な物価高騰があった08年を下落の起点にするのは不合理▽物価下落の算出方法は、生活保護利用者の支出割合が小さいテレビやパソコンなどの価格下落の影響が反映しており、利用世帯の消費構造と大きく乖離(かいり)している―と指摘しました。

 判決が、統計の客観的数値などとの合理的関連性を欠き、専門的知見との整合性もないと断じたのは当然です。「デフレ調整」による基準引き下げについて、当時の厚労相の裁量権の逸脱・乱用であり違法とした判断は、国敗訴のほとんどの判決に共通しています。

 24日の和歌山地裁判決は、「デフレ調整」とともに厚労省が基準引き下げの根拠にしている「ゆがみ調整」も違法としました。ゆがみ調整は、生活保護利用世帯の基準額と、一般の低所得世帯の消費実態の乖離を解消するという名目で行われました。その際、厚労省は専門家の会議の結論と違う手法で調整を行い、減額幅を大きくしました。この恣意(しい)的なやり方を和歌山地裁は批判しました。

 ゆがみ調整とデフレ調整の違法性を指摘したのは22年5月の熊本地裁判決に続くものです。29日のさいたま地裁判決は、ゆがみ調整をめぐる問題についてのみ、国に違法性があると判断しました。

基準の引き上げが急務だ

 13年の基準引き下げの根拠が司法から8度にわたって違法とされたことを政府は真摯(しんし)に受け止めなければなりません。基準引き下げによって、利用者の暮らしの土台は掘り崩されています。直ちに元の水準に戻すとともに、現在の物価高騰に見合う水準に引き上げることが急がれます。

 安倍政権の生活保護基準引き下げは、12年の総選挙で自民党が「生活保護費10%カット」を公約に掲げたことが始まりでした。生活保護の拡充に背を向ける政治からの転換が欠かせません。

 社会保障切り捨ての政治にストップをかけることは、統一地方選での重大な争点です。


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