2023年3月28日(火)
校閲の目
順守と遵守
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「順守」と「遵守」は何が違うのですか、という質問が寄せられました。どちらも昔から国語辞書に載っている言葉です。意味も「法律・道徳・道理などに従い、それを守ること」で同じです。
「順」と「遵」はどちらも当用漢字(いまの常用漢字)で、意味も同じ「したがう」です。そのため「順守」と「遵守」のどちらを使ってもよいのです。ではなぜ新聞は「順守」と書くのでしょうか。
それは1954年に国語審議会(いまの文化審議会)が、報道界などの要望に基づき2年にわたる審議をへて、よく使われる「渦、汁、僕」などの28字を当用漢字に加え、あまり使わない「虞、爾、遵」など28字を削る補正案を出したからです。新聞はただちにこの案を実施に移したのです。
ところが補正案は正式答申にはならなかったため、当用漢字から「遵」などの字は削除されませんでした。いまの常用漢字にも引き継がれています。そのため現在でも公用文や教科書では「遵守」を使い、新聞は「順守」と書いているのです。
いずれにせよ法を守る意味がこめられた言葉です。「法の支配」を口にしながら憲法を順守しない岸田文雄首相は、「法を支配」しようとしているように見えます。(河邑哲也)