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2023年3月24日(金)

主張

放送法の行政文書

岸田政権は解明に背向けるな

 放送法の「政治的公平」の解釈変更を巡る安倍晋三政権内の議論を記録した行政文書について、総務省が詳しく調査した結果を公表しました。当時総務相だった高市早苗・経済安全保障担当相が「捏造(ねつぞう)」だと主張する「大臣レク(説明)」について「あった可能性が高い」と明記しました。安倍首相に当時の礒崎陽輔首相補佐官らがレクを行った事実も改めて確認されました。放送の自由を侵害する解釈変更の議論に安倍氏と官邸が関与したことを浮き彫りにしています。放送行政への介入の全容を明らかにすることは欠かせません。

高市氏の資格問われる

 総務省の調査結果には、高市氏が否定する2015年2月13日のレクの文書について「原案を作成した認識はある」「(政治的公平を定めた)放送法4条の解釈という重要な案件を大臣に全く報告していないというのはあり得ない」とする職員の証言が記されています。高市氏のことが記載された他の文書についても、多くの職員がおおむね認めています。

 調査結果は「レクはなかった」などと言う証言も併記し、正確性は確認できなかったと結論付けたものの、高市氏が捏造と決めつけた根拠は揺らいでいます。

 高市氏は行政文書の存在が明らかになった直後、内容が事実なら閣僚も議員も辞めると断言しました。しかし、高市氏はあくまで「信頼に足る文書でない」などと苦し紛れの説明を続けています。15日には野党議員の追及に「質問しないで」と発言し、厳しく批判され撤回に追い込まれました。行政機関の職員が職務上作成した行政文書を捏造と否定したことに閣僚としての資質を疑う声が相次いでいます。「朝日」世論調査(20日付)は、高市氏の説明に「納得できない」が62%に上っています。高市氏の進退も問われる事態です。

 調査結果は、礒崎氏の安倍氏へのレクの事実を認める一方、内容は確認できないとしています。礒崎氏は総務省調査に「総理執務室での会話等は職責上明らかにできない」と証言を拒んでいます。

 行政文書では15年3月5日の首相レクの際、安倍氏が「現在の放送番組にはおかしいものもあり、こうした現状は正すべき」などと発言し、放送法の解釈変更に「前向きな反応」があったことが記録されています。その場では、放送番組全体を見て「政治的公平」を判断するという従来の解釈を変えることについてやりとりがあったことも生々しく書かれています。首相から「国会答弁をする場は予算委員会ではなく総務委員会」などと具体的な話がありました。

解釈変更は直ちに撤回を

 首相レクのやりとり通り、15年5月12日の参院総務委員会で高市氏は、放送法の解釈変更の答弁をしました。官邸の介入を具体的に明らかにしなければなりません。礒崎氏の国会招致は不可欠です。

 歴代政府は1960年代から放送法の「政治的公平」について、一つの番組でなく放送事業者の番組全体で判断すると解釈してきました。その根本には、表現の自由を保障する憲法21条と、放送による表現の自由確保を掲げた放送法第1条があります。長年の解釈を強引に変えたのが安倍政権です。

 岸田政権は経過の検証とともに、解釈変更を撤回すべきです。


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