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2023年3月23日(木)

主張

気候変動6次報告

事態は切迫 直ちに行動起こせ

 国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が第6次統合報告書を公表しました。世界の平均気温を産業革命前と比べて1・5度未満に抑えるというパリ協定の目標を達成するためには、現状の取り組みでは極めて不十分であることが明らかにされました。世界中の専門家がまとめた科学的知見です。温室効果ガス排出量の削減目標を上積みし、直ちに行動に移すことが各国に求められています。

今後10年の取り組み重要

 統合報告書の発表は2014年以来9年ぶりです。人間の活動によって排出された温室効果ガスが地球温暖化を引き起こしたことは「疑う余地がない」とし、気候変動が「大規模な損害と不可逆的な損失をもたらしている」と指摘しました。

 世界の平均気温は産業革命前からすでに1・1度上昇しており、これまでに各国が提示した削減目標を達成しても今世紀中に1・5度上昇すると報告書は警告しました。1・5度未満に抑えるためには、温室効果ガスの排出量を35年に19年比で60%減らす必要があるといいます。

 暴風雨の巨大化や干ばつ、海面上昇は地球環境と人々の暮らしに重大な悪影響をもたらしています。特に途上国では深刻です。食料生産や居住など生活の基盤を奪われることで貧困人口が増え、紛争の要因にもなりかねません。

 大気中の温室効果ガスが一定の濃度を超えると後戻りできなくなり、悪化を止められなくなるおそれもあります。

 今後10年間の対策が決定的です。排出量が世界1位の中国と2位の米国の責任は重大です。

 とりわけ重要なのが発電による排出を実質ゼロにすることです。グテレス国連事務総長は「人類は薄い氷の上に乗っており、氷は急速に溶けつつある」と現状に危機感を示し、先進国は30年、その他の国は40年までに石炭火力による発電から脱却することを求めました。

 22年11月に開かれた国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)では欧州諸国が求めた「すべての化石燃料の段階的削減」で合意できませんでした。各国が姿勢を改め、脱炭素に向けて実際に踏み出すべき時です。

 日本の発電量は3割が石炭火力です。岸田文雄政権はエネルギー基本計画で、30年度も2割を石炭火力に依存するとしています。石炭火力の新規建設を中止し、既存のものも30年をめどに廃止することが、脱炭素に真剣に取り組むかどうかの試金石です。

対策にならないGX方針

 日本の再生可能エネルギーの潜在量は現在の電力使用量の7倍です。省エネの推進と再エネの普及が急がれます。エネルギー価格の高騰から国民の暮らしを守るうえでも国産の再エネが効果的です。

 岸田政権は「グリーントランスフォーメーション(GX)基本方針」で原発の新規建設や老朽原発の運転期間延長を打ち出しました。30年までに二酸化炭素排出量を世界で半減させることが求められているとき、30年代以降の新設原発では間に合いません。

 日本の排出量は世界5位なのに、削減目標は世界平均を下回っています。思い切って引き上げ、責任を果たすべきです。


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