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2023年3月22日(水)

主張

株取引の低税率

富裕層優遇する不公平改めよ

 岸田文雄政権は、消費税にインボイス(適格請求書)制度を導入して売上高の低い非課税業者に新たな負担を強いる一方、大資産家が優遇される税制には手をつけようとしません。年間所得が1億円を超すと所得税の負担率が下がってしまう「1億円の壁」が大きな問題になっています。税の不公平を正して富裕層に応分の負担を求め、暮らしを守る財源を確保することは、格差を是正するうえで待ったなしの課題です。

少なくとも欧米並みに

 「1億円の壁」の原因は、株式の売却益などの金融所得に課される税率が一律20%の分離課税になっていることにあります。

 富裕層では、株式の配当や土地や株式を譲渡して得た所得が多くを占めています。分離課税方式はこれらの金融所得を他の所得と分けて税金を計算します。高額所得者ほど、分離課税となる金融所得の割合が高いため、所得税の負担率が下がってしまうのです。

 欧米諸国と比べても日本の富裕層優遇は異常です。日本共産党の小池晃書記局長に財務省が示した国際比較によると、所得が上場企業の株譲渡益のみの夫婦子ども2人世帯にかかる税率と税額は、所得10億円の場合、米国で51・8%、4億9200万円(株の保有期間1年以下)です。短期間の株保有による譲渡益を、投機的な利益とみなして重く課税しています。

 またフランスでは30%、3億円、ドイツで26・4%、2億6307万円でした。日本は20・3%、2億270万円と著しく低くなっています。

 高額所得者の株譲渡益については、欧米諸国並みに30%以上の税率が適用されるようにすべきです。将来的には、勤労所得などと合算して課税する総合課税を検討する必要があります。

 株式配当については、少額の配当や低所得者を除いて、総合課税を義務づけ、富裕層の高額の配当には所得税・住民税の最高税率が適用されるよう改めなければなりません。

 岸田首相は就任前、「1億円の壁の打破」「金融所得課税の強化」を公約しましたが、政権に就いてからは、経団連など財界の抵抗を受けてすっかり腰砕けです。

 いま開かれている通常国会に政府が提出している「所得税法等の一部改定法案」では、所得が30億円を超える人に、一定の基準を設けて追加の税負担を求めるだけです。対象となるのはわずか200人程度です。所得50億円の人で2~3%負担が増えるだけといわれます。しかも施行は3年後です。不公平税制の是正にほど遠い内容です。

格差広げる税制でなく

 この法案では、少額投資非課税制度(NISA)の枠を大幅に拡大します。非課税限度額を1800万円に引き上げます。多額の投資ができる、所得の多い人はますます有利になります。多くの国民は投資の余力はなく、元本保証のある預貯金で資産を保有しています。

 預貯金を対象から外し、リスクのある投資だけを税で優遇する制度では国民の資産形成を支援することになりません。

 年金など社会保障を削減しながら、「貯蓄から投資へ」とあおる政府の姿勢では、格差をますます広げることにしかなりません。


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